第79話 フラグ回収
まさか、菫がカラオケに来るわけない、そんな事ないと信じながら、いつ部屋のドアが開くのかと不安でいっぱいであったが、
「ふー! 歌ったー!」
「沢山歌いましたよね、喉大丈夫ですか?」
たっぷり4時間、最後まで菫が部屋のドアを開けにくることはなかった。
あの様子からして、スマホのGPSからどこにいるかを割り出して、カラオケまで来そうな勢いだったのだが、杞憂だったらしい。
会計を済ませ、自動ドアから出ると、
「……あのさ、廉君、まだ時間あるからちょっと寄りたい所あるんだけどいいかな?」
現在時刻は午後3時を過ぎたところ、開店と同時に入店したので4時間歌ったが、まだ帰るには少し早い時間だ。
「場所にも寄りますけど、どこに行くんですか?」
「んー、お洋服屋さん?」
「服屋ですか、いいですよ、行きましょう」
「ダメです!」
突然後ろから聞こえてきた声に、りん先輩と共に驚く。
後ろを振り向くとそこには…
「す、菫!?」
薄々こうなるとは思っていたが、やはり菫だった。
「お兄ちゃん! りんさんが今からどこに連れて行くか分かってますか!?」
「え? 服屋だって…」
「あぁ、もう! どうしてお兄ちゃんはりんさんが嘘をついているとも思わないんですか!?」
「え? 嘘? そんなわけないでしょ」
「もう! そこがお兄ちゃんの甘い所です! よく今日まで襲われませんでしたね!」
「………」
何度も襲われかけた事はあるのだが、なぜか毎回なんとかなっているし、あんまり思い出したくもないので、気にしない事にしているのだが、確かにこのままだといつか本当に取り返しのつかない事になるのも、時間の問題かもしれない。
「す、菫さん? 私はただ単に服を選んでもらいたかっただけなんだけど…」
「口だけではなんでも言えますよ! 最後まで確認しないと信用できません!」
「じ、じゃあ! 菫さんも付いてきてくださいよ! それなら安心でしょ?」
「………そういうことなら、私も付いていきます」
入る間もなく、話が進み、菫も買い物に付いてくる事になったらしい。
***
「どうやって、ここ、分かったんだ?」
「……言いたくありません」
移動中、りん先輩に聞こえないように声量を抑えて、菫と会話をする。
「どうしてそこまで俺の事が心配なんだ? 俺にとっては妹のお前の方が心配だよ」
「お兄ちゃんは分かってないんです……分かってないんです……」
分かってないと言われても、何にも身に覚えが無いし、心当たりも無い。
菫が何を言いたかったのかは兄の俺には分からなかった。
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