第80話 我慢
「一体、何が言いたかったんだ…?」
その言葉を口にしても、返事が返ってくる事はない。
「ここ…なんだけど?」
菫に言われた言葉を考えている間に、りん先輩の目的地に着いたようだ。
「えっと…ここって…」
「ここはお洋服屋さんですけど…、お兄ちゃんが入って良い場所ではありません! りんさん!? よくあの会話から私達をここに連れて来れましたね!?」
りん先輩に連れて来られたのは服屋は服屋でも、下着を売っているランジェリーショップであり、菫の言う通り、僕が入って良い場所ではないのは明らかだった。
***
「瑠璃さん、一緒にショッピングに行きましょう」
廉くんがバイトに行っていて、家にいない時、真珠ちゃんからそう誘われた。
だけど私は、
「行きたいのは、行きたいんだけど、お金が無いんだよね〜」
「お金が? 何に使ったの?」
「いや、ちょっと…ね」
何用のとは言わないがカメラの画質を上げるために奮発した結果、自由に使えるお金がほとんど無くなってしまったのだ。
「ところで急にショッピングなんて、どうしたの?」
「瑠璃さん、私はずっとおかしいと思っているのよ」
「え? 何が?」
目的語がないため、1番重要な部分が分からない。
「彼には、性欲、というものがあるのかしら?」
「あるでしょ、男の子だし」
「それじゃあ、彼が◯◯◯ーしているの、見たことある?」
「………ないかも」
廉くんの事はずっっっと見ているけど、そういう事をしているのは未だに見た事がなかった。
「彼にカメラの存在を気付かれる前から、そういう事をしているのは私も見た事がないのよ」
「え? でも、確か、真珠ちゃんがこの部屋で廉くんと会ったのって、引っ越して2日か3日くらいじゃなかったっけ?」
「えぇ、そうよ。でも、その3日の間にしてても、そこから何ヶ月もの間、我慢できるのかしら?」
「よ、よく分かんないけど、出来るんじゃないかな? よく分かんないけど…それで、それがショッピングと関係あるの?」
「普通に考えてみなさい、出来るわけないでしょ? あなたは何ヶ月もの間、我慢した事がある? ないでしょ? だから、彼は既に限界を迎えている、そこを突くのよ」
「え? え? どういう事?」
「さぁ、一緒にショッピングに行くわよ!」
訳も分からぬまま、真珠ちゃんに手を引っ張られ、家を出る。
「私言ったよね!? お金無いって!」
「安心しなさい、今日は私の奢りよ、好きな物買うと良いわ」
「いいの!? 遠慮せずに選んじゃうよ!? それで…どこに行くの?」
「買いに行くわ、勝負下着を」
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