第81話 喧嘩

「で? これからどうするんですか、りんさん?」


「もちろん今からそこのお店にはいr…」


「そこまで行きたいのですか…? 分かりました、私と2人で入りましょう。お兄ちゃんはここで待っていてください」


「嫌だ、廉君に選んでもらいたい」


「私が選んであげますよ、お兄ちゃんよりも絶対にセンスが良い自信があります!」


「菫さん、分かってませんね。廉君が選ぶから良いんですよ。たとえ選んだ物が同じであっても、それは菫さんが選ぶよりも廉君が選んでくれた事が嬉しいんですよ。選ぶ物じゃ無いんです。廉君が私の事を考えてくれた悩んで選んでくれた事が嬉しいんです。菫さんはまだそういうところが分かっていませんね」


「………分かってます。それを阻止するために私が代わりに行くんです。そんな事も分からないんですか?」


これが女子の喧嘩、というものなんだろうか、今から大荒れになる予感がする。

出来れば何かが起こる前に収めたいのだが…


「ま、まぁまぁ、りん先輩も菫も落ち着いて…」


「「うるさい! ちょっと黙ってて!!」」


「はい、分かりました、すみません」


僕にそんなことは出来なかった。

僕が出来ることは始まってしまった喧嘩をただ眺めているだけであった。




***




「それじゃあ行きましょうか、勝負下着を買いに!」


「ほ、本当に買いに行くの? というか、まだ持ってないの?」


本当に言ってる? みたいな顔をして瑠璃さんはこちらを見る。


「もちろん持ってるわよ、馬鹿にしないでちょうだい」


「じ、じゃあ、どうして買いに行くの?」


「理由なんてないわ、ただ、私が、今、新しい物、が欲しいからよ」


「欲しくなったらすぐに新しい物買うなんて、お金が勿体無いよ」


「………え? じゃあ何? 瑠璃さんは私に新しい物なんて買うな?って事かしら? 一生古い下着のままでいろ?って事なのかしら? そもそもあなたの意思なんて関係ないし? 私が買いたいって思ったから買うだけなの、そこ理解してもらえるかしら?」


「真珠ちゃん、急にどうしたの? 突然、怖いよ」


「今流行りのヒス構文って奴みたいよ、どう? 出来てたかしら?」


最近ネットで知ったヒス構文というものを自分なりにやってみた。

正解が何なのかは未だ分かっていない。


「ビックリした〜、急にヒスるからどうしたのかと思ったよ〜」


「本当? 私、ヒス構文出来てたかしら?」


「うん、出来てた出来てた! けど…」


「けど?」


「それ、廉くんにやるのはやめた方が良いと思うよ」


「どうして? 今からでも使おうと思っていたのだけれど…?」


「あのね、真珠ちゃん。ヒス構文ってのは男の人からすると、とっっっっっても面倒くさいのなんて返せばいいかよく分からないし、返答次第ではもっと大変な事になっちゃうから!(個人の意見です) 廉くんがどうかは分からないけど一応やめた方がいいと思うよ…」


「なるほど…そうなのね、一応やめておくわ」


「うん! そうした方がいいよ!」


「それじゃあ、今度こそ買いに行きましょう!」

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