第77話 呼び名
「「「「「「お疲れ様でしたー!」」」」」」
「みんな、今日までありがとうね! みんなの働きぶり、とっても良かったから、出来たら〜来年もバイトしに来て欲しいな〜なんてね」
「はい、私もとてもいい経験になりました! 楽しかったです!」
「そうね、瑠璃さん。私もとてもいい社会経験になったと思ったわ」
「来年も来ちゃう? なんてね」
「いえ、琥珀さん、それはいい考えだと思うわ」
「実際、いつものコンビニバイトと違って新鮮で楽しかった!」
「私は日本に来てそもそも、バイト、というものが初めてでとても良い経験になりました!」
コンビニバイトと違ってお客さんとの距離が近い分、気をつける事こそ多いのだが、新鮮で楽しかったのは事実だ。
来年もこのメンバーで海の家にバイトをしに来るのだろうか…
***
「廉、ちょっといい?」
僕の名前を呼び捨てで呼んだのは、琥珀さんだった。
海の家から帰る途中、駅中で自由に各自買い物となったのだが、真珠は瑠璃さんと一緒に、りん先輩とリシアさんはそれぞれ別の場所におみやげを買いに行ったのだが、僕は琥珀さんに呼ばれ、一緒におみやげを買うことになった。
「琥珀さん、さっきはどうして、僕の名前を呼び捨てで?」
「別に… 気まぐれ…」
気まぐれと言うが、その言葉はどこか弱々しい。
「大丈夫ですか? どこか体調が悪いとか?」
「き、急になんで…」
「さっきから、なんか…」
上手く説明出来ないのだが、なんかそんな感じがした。
「……廉」
「な、なんですか?」
「廉って、呼び捨てで呼んでも、私の事嫌いにならない?」
「え?」
「嫌いにならない?」
「え? ど、どうしたんですか?」
「嫌いにならない?」
「嫌いにならないですよ、どうしたんですか?」
「………」
嫌いにならないか? と聞かれ、その質問の意図が分からなかったのだが、名前を呼び捨てで呼ばれたからと言って、人を嫌いになることはない。
「……瑠璃ちゃんは廉を君付けで呼んでるし、真珠ちゃんは…まぁ…。だから私も、廉を特別な感じで呼んでみたくて…」
「ズルイです!」
「「え?」」
突然、後ろから声が聞こえてきたと思ったら、リシアさんがそこにはいた。
「琥珀さん! 呼び捨てはズルイです! 私も廉君を特別な感じで呼びたいです!」
「えぇ…」
リシアさんがそう言って聞かず、結局みんなで特別な感じの呼び名を考えることになった結果…
「もう、名字の滝山からタッキーはどう?」
「タッキーですか…」
名前が廉しかないので、もじろうとしても文字数が少な過ぎてもじる部分が無いのだ。
しょうがなく、名字をもじるくらいしか思いつかなかったが、リシアさんの反応は…
「うん! タッキー! いいですね!」
どうやらお気に召したようだ。
その後は真珠達と合流して、帰路に着いた。
家に帰るとスマホに通知が来ていた。
「りん先輩?」
りん先輩とはバイト関係の連絡しかしないので、不思議に思い、スマホを開いて、内容を確認する。そこには…
『夏休み、空いてる日があったら教えて欲しい』
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