第40話 久々の同じシフト

今日は久しぶりに廉くんと一緒のシフト、真珠さんとかにも邪魔されない、最高の日だ。


「あっ、りん先輩、それやりますよ」


「い、いいよいいよ。私やるから、大丈夫だよ」


「そうですか…じゃあ、レジ行きますね」


「うん、よろしく」


廉くんは私が何かしようとすると必ずと言っていいほど、手伝ってくれようとする。最初は嬉しくて手伝ってもらってたけど、廉くんに余計な負担がかかっていると思い、最近は断っている。けど、家とかでは私たちがいろんな事を手伝っている…ということは、その逆のことをしてくれてる廉くんは私のことがす、好きなのかな…?


「りん先輩! レジ、手伝ってもらえますか!?」


「分かった、すぐ行く!」


今日は本当にいい日だ。同じシフトの日として日本の祝日…いや、世界共通で今日という日を祝日にしたいぐらいだった。この時までは…


耳にタコができるほど聞いた、入店音が鳴る、そして、コンビニに入ってきたのは、瑠璃さんだった。私と廉くんの2人きりの時間が…


「すみませーん、レジ、お願いしまーす」


「はい、……えーっと、サラダチキンがひt」


「ごめんね、廉くんにお願いしたいの」


「わ、分かりました…」


「れ、廉くん、瑠璃さんが…」


店の裏にいた。廉くんを呼ぶ。本当はしたくないのだが、今はコンビニの店員という立場上、お客様、瑠璃さんの言うことはなるべく聞かないといけないのだ。



「瑠璃さんが? 僕を…?」


瑠璃さんが廉くんに接客をして欲しいことを伝え、入れ替わりの形で私が裏に入る。


「せっかく…廉くんと2人きりだったのに…」


本当は店長もいるのだが、店長は別だ。まぁ、会計が済んだら、帰ると思っていた。


結論から言おう、瑠璃さんは会計の後にすぐ帰った。

そしたら、次は真珠さんがコンビニに来た。

また、私が接客をしようとしたら…


「りんさん、申し訳ないけれど、彼と変わってくれるかしら」


と言われて、これからは手を組んでいる人たちが来たら、最初から私じゃなくて、廉くんにレジを任せることに決めた。そこまではまだ百歩譲って許せるのだが、会計が終わった後も、廉くんと喋っているのだ。そして、その話の内容が聞き捨てられないのだ。


「ちょっと、ハンバーグを作っててね、ネギが足りなかったのよ」


「そ、そうなんだ…えっ? ネギ?」


「そう、ネギ。ハンバーグには必須でしょ?」


「僕の考えてるハンバーグと真珠の考えてるハンバーグが違うかもしれないから、ネギに関しては突っ込まないけど、そのハンバーグはもちろん、真珠のぶんだよね?」


「もちろん、私とあなたの分よ」


「そ、そうなのね。前にご飯いらないって言ったはずだけど…」


「私が勝手に作ってるだけだから、気にしないで」


「……分かったよ。でも、バイト終わるの」


「10時でしょ。分かってるわよ」


「……何で知ってるかなんて、もう、聞かないからね。ほら、ハンバーグ作ってるんでしょ。帰ったほうがいいんじゃない?」


「名残惜しいけど、帰ることにするわ。それじゃあ、この後もバイト頑張って」


こんな感じだった。何も知らない人が聞いたら、『何、この2人付き合っていて、同棲までしてるの!?』だと思うだろう。実際、このやりとりを見ていた店長も、廉くんに彼女なのかを聞いていた。廉くんはそれをキッパリと違うと答えていたのは安心していた。


そして午後10時、高校生の私たちはこの時間までしか働くことができないので、店長に挨拶をし、帰路についた。


「今日もお疲れ様でした」


廉くんが歩きながら私に言う。

同じシフトの時だけ、廉くんは途中まで一緒に帰ってくれる。

その時間が私の人生で1番幸せな時間だ。


「……うん。廉くんも…お疲れ様」


「……今日はすみませんでした」


廉くんが突然、私に謝ってきた。けど、なぜ謝られているのかが分からなかった。


「今日、瑠璃さんと真珠が接客を変わってくれ、って言いましたよね。流石にそれはりん先輩に悪いなと思って、2人に辞めるように言っておいたので、大丈夫だと思うんですけど。もし、また同じようなことがあったら、無視してそのままやっちゃってください」


「……分かった。ありがと」


「いえ、悪いのはこっちなので」


こういう小さな優しさが私をダメにしていく。もっと、もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと好きになってしまう。

こうなってしまうと私は何をするかが分からない。


「廉くん、今日、私の家でご飯食べない?」


「えっ? 突然どうしたんですか?」


私はダメだと分かっているのに、止めることができなかった。

こういう所が私の悪い所だ。

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