第41話 小さな部屋に1人
「気持ちは嬉しいですけど、今日は真珠がハンバーグを作っているそうなので…」
「そ、そうだよね! 急にごめん。今日はちょっとここで…先に帰るね! じゃあね!」
いつもならもう少し一緒に帰ることができたのだが、自分が何を言ったかを理解し、我に返り、そこで廉くんと別れてしまった。
廉くんから逃げるように家に帰り、ため息をつく。
「どうして、私はこうなっちゃうんだろう」
元カレに振られた時から何も変わってない。
良かれと思って、お弁当やら、何やら、いろんな事をしてあげた。
でも、それは逆に、元カレの機嫌を損ねることになっていたみたいだった。
「りん、お前ってさ、なんか母親みたいで鬱陶しいんだよね。こういうのやめてくれない?」
元カレは両親と上手くいってなかったらしく、ことあるごとに構ってくる母親が特に鬱陶しかったらしい。その元カレの母親がわりになろうと思ってやっていたのだが、ダメだったらしい。そこから関係がギクシャクし、結局別れてしまった。
生まれた時からうまくいかない。
私は生まれた事を祝福されたことがない。
たった1度だけだったらしい。だけど、その1回で私ができてしまった。
父親は蒸発し、母親は仕方なく私を産んだらしい。
私は母親に『お前が生まれたせいで』とか、『早く消えてくれ』など、いろんな暴言を吐かれた。私はただ普通に愛されたかっただけだった。
高校生になったら、家を追い出された。
元からあんな家には居たくなかった。
そこからは必死に働いて生活費を稼いだ。今のコンビニバイトもしていたが、それだけではどうしても足りなかった。私はいわゆるパパ活もしていた。お金目的だったが、それとは別に誰かに愛されたい愛とはなんなのかを教えて欲しいと思ってやっていた。
もちろん、何度も危ない目に遭った。けど、お金のために辞めることはできなかった。
パパと一緒にご飯を食べたり、買い物をしたりしたけど、心が満たされる事はなかった。
けど、廉くんに会って今まで空っぽだった心が少しだけ満たされた気がした。
廉くんに愛されたい。愛して欲しい。私に愛とはなんなのかを教えて欲しい。
それだけだった。
だけど、廉くんの周りには私よりも可愛い人が何人もいる。
今はまだ大丈夫かもしれないけど、もしかしたら、あの中の誰かと廉くんが付き合い始めるかもしれない。そう思ったら怖くなってしまった。
服に水滴が付く。気が付いていなかったが私は今、泣いているらしい。
「怖い。怖いんだよ。廉くんまでいなくなったら…私…」
「死んじゃうかもしれない…」
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