第39話 現実

分かっていたけど、分かりたくなかった。滝山くんは。もちろん、滝山くんも男の子なので、色仕掛けで揺らぐこともある。けど、結局は断られてしまう。無理矢理ヤればいいと思うかもしれないが、今になって思えば、その後どうなるかは簡単に分かるだろう。きっと滝山くんとの関係が全てなくなってしまう。それだけはイヤだ。


「……滝山くんの初恋はまだです。……彼は誰かを好きになったことがありません」


「……正解です。全問正解おめでとうございます。お兄ちゃんとの結婚を認めますが、最後の問題が現実です。リシアさんがお兄ちゃんと結婚できる確率は限りなく0に近いです」


「………」


私はただ黙るしかなかった。黙っている間に菫さんは部屋を出て行った。


私たちがどれだけ押しても、彼が揺れることはない。

けど、このままではダメだ。たとえ一生揺れることがなくても、揺らし続ける。

だって…私は滝山くんのことが好きだから!




***




「……家に帰ったら、なんで誰かしらがいるの?」


「お帰りなさい、あなた」


リシアさんを実家に泊まらせて帰ったら、真珠がいた。

もう驚くこともない。だって家に帰ったらほとんど誰かしらがいるから…


「それで…リシアさんはどうなったの?」


「真珠に言った通りに実家に泊めることにしたよ」


「そう、ここから、まぁまぁ離れているから安心ね」


「まだ信頼してないのか? リシアさんのこと」


「当たり前でしょ。私だけでなくあなたまで眠らせて襲おうとしたのよ」


「まぁ、そうだけど…」


正直、今までで1番危なかった。真珠にもされたことがないようなことだった。


「リシアさんがやって許されるなら、私もヤるわよ」


「そ、それは…やめてくれ…」


「まぁ、あなたが言うならやめるけど、今日、バイトでしょ?」


「なんで真珠が僕のシフトを知ってるかは知らないけど、そろそろ時間だから、家、出るけど…どうせ、家にいるんでしょ」


「もちろん、家で待っているわ」


靴を履き替え、外に出ようとしたら、


「あなた」


振り向いたら、そこには真珠が顔を上げて立っていた。


「ん? な、何、真珠?」


「もちろん、行ってきますのチューでしょ」


「し、しないから! も、もう、行ってくるよ!」


僕は急いで家を出た。真珠から逃げるように…

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