第31話 ヤりたいのは同じ other side story

「リ…シ…ア…」


きっと何かの薬が付けられたハンカチを口に当てられて眠ったと思っただろう。

僕はこの時を待っていた。

流石に椅子に縛られた状態でヤるとは思えない。

だからいつしか縄をほどく時が来ると思っていた。

そしてその予想は当たり、リシアが紐をほどき始めた。

が、すぐに行動してはならない。下手に動いたら、また昨日の二の舞になってしまう。

動くのは慎重にしないと。

そう考えていたら、突然、家のドアが開く。


「廉く〜ん、晩御飯作りにきたよ〜」


琥珀さん!? どうしてここに!? というか鍵は!? 何で持ってるの!?


今すぐ動きたい気持ちがあるが、その衝動を何とか抑える。

その後、僕を縛っている縄をほどき、2人でベットに移動させられた。


「それで…あなたはどうして廉くんの家にいるの?」


琥珀さんもどうして僕の家の鍵を持っているのかなぁ?


「え〜っと、私は彼のクラスメイトで…」


墓穴を掘りましたね、リシアさん。

琥珀さんは僕のクラスメイトです。なのでクラスメイトではないと気づけるはず!

おかしいことに気づいて! 琥珀さん!


「え? どういうこと? あなたが廉くんのクラスメイトなら、必然的に私ともクラスメイトだと思うんだけど、私はあなたを見たことがない。クラスの人は一応全員覚えているから、何かの間違えということもない。あなたは一体何者なの?」


いいぞ! おかしいんだよ! 琥珀さん!


「………」


墓穴を掘ったことに気づき、リシアさんは黙ってしまう。


「ちょっと、答えてよ! あなたは誰?」


「日高真珠…」


え?


「え?」


「遠野瑠璃…」


ちょ!


「ちょ!」


「田原りん…」


怖いよ!


「ちょ! ちょっと待ってよ!」


「そして高浜琥珀さんですね」


怖いよ! 急に人の名前を連呼するなんてリシアさん!


「ど、どうして私の名前を…」


「私はあなたたちと手を組みました。荻リシアです。申し遅れてすみません」


「何だ! 仲間なのね! 早く言ってよ! もう!」


何でそれだけで信じちゃうの〜琥珀さ〜ん。


「それで…どうして、廉くんは眠ってるの?」


「………私にも分かりません。家に来たら滝山くんが椅子に縛られていて…」


嘘つくな! リシアさんが縛ったんでしょ!


「いったい誰がそんな酷いことを!」


「本当に…そうですよね」


リシアさん…今更だけど今更すぎるけど…怖いよ…


「「でも…」」


琥珀さんとリシアさんの言葉がシンクロする。


「滝山くんが無防備に寝ていると思うと…」


「廉くんが…無防備に…眠ってる…」


目を開けてないが、音で分かる。絶対、絶対、近づいてきてる!

動くなら今しかない!


「2人とも何しようとしてるの?」


「「えっ?」」


これまた見事にシンクロした。

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