第83話 胃潰瘍

目をゆっくりと開ける。

目の前に見えるのは真っ白で無機質な壁、いや天井か……

身体を起こそうとするが力がうまく入らず、身を起こすことができない。

早々に僕は起きる事を諦めて、ただ一点、天井を見つめる。

急に眩暈がして倒れたまでは覚えているのだが、それ以降はさっぱりだ。

左腕に点滴が繋がれているので多分病院だとは思うのだが、自分の身に何が起きたのか、どうやってここに来たのか。

真珠達の事だから、近くにいると思っていたのだが、誰も来る気配がない。

もしかして何か感染症にでも侵されているだろうか。



何もない天井を見つめる事、数十分。

ドアが開き、一人の看護師さんが入ってくる。


「あっ、お目覚めになられたんですね。気付くのが遅くなってしまい申し訳ありません」


「………いえ、ところでどうして僕はここに居るんですか?」


「救急搬送でこの病院まで運ばれまして、色々と検査した結果、1週間ほどの入院になりました」


「じゃ、じゃあ僕は何か病気になっって居るって事ですよね!?」


「そうですね」


「ぼ、僕は何の病気にかかっているんですか!?」


「………胃潰瘍ですね」


「………い、胃潰瘍?」


「そうです。胃潰瘍です。胃潰瘍といっても滝山さんの原因はストレスからきていると考えられて、軽いわけでもないので。簡単に言うと胃に穴が空いています」


「胃に……穴が……?」


「はい、後は主治医からの説明を聞いてください」


部屋でする事が終わったのだろうか、看護師さんは一度部屋を出て行ってしまった。

その後、主治医の先生からの説明を受けた。

説明によるとこの病院には救急車で搬送されたらしい。

原因は貧血を起こしたそうだ。

念の為色々と体を検査したところ、胃に穴が空いているのが見つかったそうだ。

ストレスで胃に穴が開くのは珍しくない事であるそうで、色んな負荷がかかる思春期の難しい時期、僕と同じように胃潰瘍になる人は少なくないらしい。

とりあえず、貧血用の点滴、胃潰瘍に薬を1週間ほど投与するらしい。

母さんと父さんにも連絡はいっているようで、少ししたら見舞いに来るらしい。

ずっと気になっているのは真珠達の姿が少しも見当たらない事だ。

少し気がかりだったので主治医の先生に聞いてみると驚くべき反応が返ってきた。


「あぁ、君を助けるために救急車を呼んだ子達だね。救急車に大勢は乗れないから、病院まで来たのは1人だけだったらしいけど、君の症状を聞いたら安心して帰ったらしいよ」


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