第46話 テニス部のイケメン、地雷を踏み潰す
たまたま、日曜日に琥珀ちゃんに会ったので、好都合だと思い、話しかけた。
琥珀ちゃんは友達の田原りんちゃんと一緒にいた。
このチャンスをモノにしようと思い、言葉をかけた。
そして、返ってきた言葉は、
「テメェ、ちょっとつら貸せよ」
だった。
この時、普段からは想像できないような琥珀ちゃ…琥珀さんの口調が僕に、本能的に死を感じさせた。
「琥珀さん…?」
「ちょっとこい」
「は、はい」
琥珀さんの圧に負け、素直に着いていく。
琥珀さんに店と店の間にある細い路地に連れて行かれた。
まだ、琥珀さんの腕は胸ぐらをつかんでいる。
「それで? さっきは何て言った?」
「………」
さっき言った言葉を言ったらこの世から消されそうな気がしたので、自分の身を守るために僕は黙った。
「黙ってないで、なんか喋りなよ」
しかし、それもほとんど意味がないものだった。
チラッと横を見るが、りんちゃんも、僕の友人が逃げないように見張られている。
「それで…?」
「……琥珀さんが滝山のことが好きなこと」
「違う、そのあと」
「……滝山は振り向いてくれないんだろ?」
「違う! もっとあと!」
「滝山よりも…俺のほうが…カッコいいと思う?」
「そう、それだよ。ずーっと思ってたんだけど、クラスだけじゃなくて世界で一番カッコいいのは廉くんだから! お前なんかよりも廉くんの方が1000000000000(1兆)倍カッコいいから!」
僕は琥珀さんが熱く語るのをただただ聞くことしかできなかった。いや、させてもらえんなかった。
最後に琥珀さんが声を低くして僕に言った。
「廉くんはお前なんかよりも性格もいいし、顔もいい、全てにおいて負けてることを自覚して、今後生活するように」
「は、はい!」
おじいちゃんが昔僕にこの世には関わってはいけない人がいると言ったことがある。
その言葉の意味をようやく理解することができた。
今、僕の目の前にいる、高浜琥珀さんがその関わってはいけない人だと思った。いや、行動で思わせざるをえなかった。
***
「お兄ちゃんが電話をくれるなんて、初めてで菫はうれしいです」
「そうか、良かったよ。ところで、リシアさんはどうしてる? 菫とか母さんに迷惑かけてない?」
「大丈夫です。リシアさんはとてもいい人です」
「そう、なら良かったよ…じゃあ…」
「ちょっと待ってください! そんなことを聞くために菫に電話をしたのですか?」
「うん、まぁね。リシアさんが心配だったし…」
「お兄ちゃん…」
「なに? 菫」
「菫にだけ教えてください。お兄ちゃんはリシアさんのことが好きなんですか?」
「いや…」
「じゃあ、誰か好きな人はできましたか?」
「……まだできてないよ、ただ…」
「ただ…?」
「名前も顔も知らない人とは恋に落ちることはないだろ? その人のことは何も知らないんだから」
「それって…」
「そう、僕が恋するのは身近な人だ」
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