第72話 告白

「あなたが好き」


日も沈み始めた海辺で真珠が僕に言った。

文字にするとたった6文字の言葉、だけど、とても真剣な声だった。

いつもの真珠はヤンデレ…と言う言葉が正しいのだろうが、そんな側面が今の真珠の言葉にはそれが見られなかった。


「………それって、本……気……だよね、分かってる。今までも真珠の告白は一度も冗談ではなかった。けど…違う…」


「……そうね、いつもと違うわ。……あなたもご存知の通り、私は病んでいるわ。………だから、あなたは私の事が嫌いなのよね」


「え!? ど、どうして、俺が真珠のことが嫌いってことになってるんだよ!」


真珠のことは嫌いではない、もちろん、真珠にとんでもない事をされたこともあったが、真珠が軽蔑の対象になったことはなかった。


「なら、好きってことなのよね?」


「……………」


その質問に僕は答えることができない。


「無言だと、私の事が好きではないと判断するわよ」


違う、そうじゃない。今の僕にはまだ分からないんだ。

誰かを好きになる、ということが。



***



生まれた時から生活に困ることがなかった。

あれが欲しい、これが欲しいと頼んだら、全て用意してくれた。

だけど、このままではマズイと思い、自立しよう、と思った。

今になって思う、きっとそれがいけなかったのだ。

僕が思っていた自立には、誰かに頼る、という選択肢が無かったのだ。

人に頼らず、全てのことを自分でやる、それができてこそ、自立している、と思っていた。

そしたら、いつの間にか、誰かを好きになる事が出来なくなっていた。

心の奥底で好きになるのは、甘えている、人に頼っているとでも思っていたのだろう。

しかし、僕だって高校生の男子なので、アッチの欲はなくはないので、真珠達に迫られて、無反応なわけではない。

けど、


『まだ分かんないですけど…たぶんそうなると思います』


真珠のお父さんに真珠達、5人の中から最終的に選ぶと言ってしまったが、あれは建前の嘘であった。

あの時から、僕は何も変わっていない。

5人を友達としか見ることしか出来ていない。




***




「……正直に言うよ、真珠。僕は真珠達のことを友達としてしか、見ていないんだ」




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