第7話 手を組みましょう
隣の部屋で廉が大きな不安を抱いている中、その不安がさらに大きくなる出来事が起ころうとしていた。
「それでどうしたんです? 突然、話って…」
「あなたは彼のことどう思ってr」
「好きですよ。この世で1番、誰よりも、廉くんのことが」
「それは違うわ。私の方があなたより彼のことが好きですから。しかも私は廉くんの許嫁ですから」
「それ元、何ですよね」
「ぐっ!」
痛いところを突いてくる、実際、私と廉様を繋げてるのは元許婚というものしかない。廉様はもう私に構う理由はないのにまだ私に付き合ってくれている。あぁ、そんなところも好き。大好き。
「でも、あなたは彼の隣人でしかない」
「いや〜それが違うんですね〜」
そう言いながら、紅茶を出してくれた。
「どうせ、あれでしょ。ナンパされていて困っていたところを彼に助けてもらったとかでしょ」
「ぐっ! 何でその事を…」
あのコンビニの外には廉くんと私とチンピラたちしかいなかったはず。
「だって私見てたもの、彼がカッコよくチンピラ達を倒すのを」
「あなた! 廉くんのストーカーね!」
「あなたこそ、そんなものでしょ。知ってるのよ、コンビニでりんって人と熱〜く彼のことを話していたわよね。あのりんって人も要注意人物だわ。あの人は彼との距離が近すぎる」
「ぐっ!」
何なのこの人私の生活が全て知られている…というかストーカーのところは否定しないんだ…
「このままでは埒が空かないわ」
真珠が袋から何かを取り出す。
それは…
包丁だった。
「あなた、何をするつもり! もしかして…私を殺す気ね!」
ここで死ぬわけにはいかない。私は廉くんと結婚して幸せな生活を築くんだから!
「は? あなた何を言ってるの? 殺すわけないじゃない」
「へ? じゃあどうして包丁を持ってるのよ!」
「もちろん…」
「何よ…」
「料理対決よ!」
「料理対決?」
「そうよ! 料理対決よ!」
「ふうん、そんなに料理の腕に自信があるのね、いいわ、受けて立つわ!」
「道具、材料は自由、廉くんに美味しいと言われた方の勝利ね」
早速料理を始めようと冷蔵庫を開ける。が、そこには何も入っていない。
「あなた、食べ物は…」
「いや〜私、自炊なんてしないからさ〜いつもコンビニで済ませたり、外食で済ませちゃうんだよね〜」
「食べ物がないなら本末転倒ね、しょうがないわ、買いに行きましょう」
*
「あなた、買い物に行くわよ!」
家のドアが突然開けられたと思ったら、真珠が買い物に行こうと言って来た。
「どこに? 何の?」
「晩御飯よ、今日は私たちが作ってあげるから…」
「えっ! 真珠が作るのか… それに私たち?」
「そう、私も廉くんの晩御飯作ってあげる!」
ドアの横からぴょこっと瑠璃さんが飛び出して来た。
「えっ? えっ? ど、どういうこと?」
真珠ならまだしも何で瑠璃さんが僕の晩御飯を作るんだ?
「そういう勝負なのよ、あなたが私たちの作ったご飯を食べてどちらが美味しいか、決めてもらうのよ」
「あっ、そういうことね」
そして僕は2人に連れられる形となって近くのスーパーに連れてかれた。
*
「あなた、今日何食べたい? 私が何でも作ってあげるわよ」
「え、ええと…」
「廉くん、何食べたい? 瑠璃が何でも作ってあげるよ♡」
「えっと…」
瑠璃さんがどのくらい料理ができるかは分からないが、真珠の料理だけは警戒しなければならない。お粥でも不味くできる真珠だからな…どんなダークマターを生成するか分からない。誰でも簡単に作れて、かつ失敗しないような料理は…
「ふ、2人には、ポークカレーを作って欲しい!」
カレーぐらいしか思いつかなかった。カレーとかみんな林間学校で作るから、作れるよね?
作れるよね? 大丈夫だよね?
「ポークカレーね。そんな簡単なものでいいのね」
真珠さん、あなた、今まで作ってきたもの振り返ってきなさい。
あなた毎回この世界に生み出してはいけないようなもの生み出してるんだから。
「………ポーク、ポーク、ポークカレーね、分かった。すごく美味しいの作るからね♡」
ポークカレーと言ったら、豚肉、じゃがいも、にんじん、玉ねぎが材料としてオーソドックスだと思うのだが…
「真珠、それは…」
「え? ホタテだけど…」
ん? シーフードカレーでも作るのかな?
「それで…瑠璃さんは…」
「ポークカレーと言ったら、牛肉でしょ!」
瑠璃さんもポークの意味がわかってるのかな?
「瑠璃さん、ポークって豚だよ」
「えっ? そうなの? 瑠璃知らなかった〜」
「よし、分かった。材料は僕が買うから、2人は料理だけして」
「え、別にいいけど…」
「別に構わないわ」
その後僕がポークカレーの材料を買い、家に帰った。
真珠は僕の家でカレーを作ると思っていたのだが、瑠璃さんの家で作るらしい。
ちなみに僕は家で待ってろと言われた。
*
「さぁ、カレーを作りましょうか」
「私の方が絶対美味しいの作るんだから!」
美味しい美味しい真珠の特製カレーの作り方
①野菜を切ります
②肉と切った野菜を炒めます
③鍋にお水を入れて、煮ます
④ルーを入れて完成
さぁ、これを読んでるそこの君、普通のカレーだと思っただろう、しかしこれは真珠の行動の説明を省いたものだ。これに説明を付け足すと…
美味しい美味しい真珠の特製カレーの作り方
①野菜を切ります ※一緒に指も切ります
②肉と野菜を炒めます ※ルーの箱の裏に書いてある時間を正確に守るので、焦げます。
③鍋にお水を入れて、煮ます ※お鍋が吹き出した時に真珠さんはルーの箱の裏には対処法が書いていなかったため、どうすればいいか分からず、お湯が少なくなりました。
④ルーを入れて完成 ※お湯が少ないので焦げ焦げのとても濃いカレーの完成
美味しくて死んじゃうかも♡瑠璃の特製カレーの作り方
①まず野菜と指を切ります
②肉と野菜は油が跳ねるのは怖いので炒められません
③完成です♡
「あなた、野菜と指を切って終わりじゃないの、よくそれで私の料理対決を受けてたったわね」
「うるさいわね! あなただって焦げ焦げのカレーじゃないの!」
「あなたよりは幾分もマシよ」
「………ねぇ、真珠ちゃん、私たち手を組まない?」
「? なぜあなたと手を組む必要があるのかしら」
「廉くんに幸せになって欲しいのが私たちの最大の願いでしょ」
「ええ、そうね、私が彼を幸せにする」
「なら、2人で廉くんを幸せにしちゃえばいいんじゃないかって思ったの!」
「………そうね。1人だけじゃなく、2人で彼を幸せにするならば、1人じゃできないことも2人ならできるかもしれないわね。例えば…そうね3Pとか、彼がしたいと言ったら、彼と私だけじゃ人が足りないわね。いいじゃない、手を組むの」
「じゃあ!」
なんかズレてる気もするが手を組めることに越したことはない。
「いいわ、彼を独り占めできないのは少し嫌だけど、何よりも彼に幸せになって欲しいのが私の望みだから。あなたと手を組んであげる」
「やったー!」
「手を組むのはいいけど、まずは目の前の問題よ」
「うん! 廉くんに美味しいカレーを食べさせてあげないと♡」
*
1時間後、真珠と瑠璃さんがカレーを持って来た。なぜか一つだけ。
「真珠と瑠璃さん、何で料理対決なのに一つしかカレーがないの?」
「それは…」
「それはね…」
「私たちが手を組んだからよ」
「私たち手を組んだのー」
「はい?」
「私たちは手を組んだ、つまり同盟を結んだのよ」
「だからね、争う必要がなくなったの♡」
「そ、そうなんだ…」
つまり、どういうことなんだ!?
手を組んだ? ということは真珠に協力者が増えた…
しかもその協力者は僕のお隣さん…
今までも監視されてるなーって思ったことはあったし、真珠が異様に僕のことを知ってるから、真珠が僕のストーカーで愛が重いタイプだとは気付いていた。
が、手を組んだということは瑠璃さんも…
いや、考えちゃダメだ。まだ確定したわけじゃない。
「瑠璃、廉くんのことが大好きだから、言ってくれたら何でもやるからね♡この身を全て廉くんに捧げるからね♡」
告白されたはずなのだが、嬉しいよりも怖いが勝ってしまう。
「じゃあそういうことだから、これからもよろしくね、あなた♡」
「廉くん、これからどんどん私たちが幸せにしちゃうからね♡」
「覚悟しなさい、あなた♡」
「覚悟しててね、廉くん♡」
ダメだ。瑠璃さんも真珠と同じだ…確定してしまった。
これから僕はどうなるんだ!
ちなみに2人が作ってくれたカレーは普通に食べることのできるものだった。
不味くはなかった。
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