第50話 滝山 菫

「皆さん、私のわがままを聞いてくださり、ありがとうございます」


「それで、話って何かしら? 私は一刻も早く彼のところに戻りたいのよ」


「なるべく早く終わらせるので、少しの間我慢してくださると嬉しいです」


バーベキューも終わり、菫さんが私たちを集めて、少しの間話をしたいと言っていたので、菫さんに言われた場所に私、瑠璃さん、りんさん、琥珀さん、そして…あと1人。


「すみません。お手洗いに行っていて、遅れてしまいました」


「いえ、大丈夫です、リシアさん」


「それじゃあ、全員集まったことだし、始めてもらえるかしら?」


「はい、まず皆さんに確認することがありますが、お兄ちゃんのことをどう思っていますか?」


「大好きよ」


「大好き♡」


「大好きに決まってるだろ!」


「大好きです」


「очень нравится《大好き》」


「……まぁ、分かっていました。…リシアさんは2回目ですし」


「それで、あなたが言いたいことは何なのよ?」


「簡潔に言います。あなた達がたとえ、お兄ちゃんのことが大好きだとしても、お兄ちゃんがあなた達を選ぶことは絶対にありません」


「それは違うわ」


私は自分のスマホを取り出し、音声を再生する。


『おぉ、廉くん、大きくなったね~、今年は女の子をたくさん連れてきてるんだって?』


『え、えぇ、まぁ…』


『あの中から選ぶのかい? 最終的には?』


『まだ分かんないですけど…


「嘘…ですよね…」


「いや、本当よ。これは今日、バーベキューが始まる前に録音されたものよ」


「真珠さん、これって…」


「今日、彼とお父さんに付けてたのよ。そしたら、こんなのが録音されてたってわけ」


「う、嘘です…お兄ちゃんがそんなこと言うはずがありません。これは何かの間違いです」


「何も間違ってないわ。すべて真実よ。どうやら、彼は私たちの中から結婚相手を選ぶようね」


菫さんは想定外のことを告げられ、どうやら処理が追い付いてないようだ。


「真珠さん、ということは…」


「そうよ、瑠璃さん。嬉しいお知らせね。まだ全員に可能性があるということよ」


「嘘です…嘘です…」


「菫さん、落ち込んでいるところ悪いけど、私たちは帰らせてもらうからね」


まだ理解が追いついていない、菫さんを後にして、バーベキューはお開きになった。

この時、彼女たちが考えている事は一致していた。


「廉くんは私たちの中から結婚相手を選ぶ。絶対に選ばれるのは私!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る