第54話 海の家でのバイト③

「何度も言うけど、勝負は一回よ、いいわね?」


「誰が勝っても恨みっこなしだよ!」


私たちは今、とても大事な勝負を始めようとしていた。

実際、勝負の内容は何でもいいのだ。私たちが気にしているのは、その勝負の報酬だ。


「このじゃんけんで勝った人が、最初に自由にこのログハウスでの過ごす部屋を決めることができるんだよね?」


「そうよ、瑠璃さん」


そう、このじゃんけんで勝った人が、このログハウスで過ごす部屋を好きに決めることができる。すなわち、このじゃんけんで勝った人が、廉くんの隣の部屋で一週間を過ごすことができるのだ。


「「「「「じゃんけーん……」」」」」


「「「「「ポン!」」」」」




***




「じゃあ、今日から、一週間よろしくね! 廉くん!」


「あっ、隣、琥珀さんなんですね」


「うん、そうだよ! よろしくね!」


琥珀さんに聞いたところ、部屋はじゃんけんで決めたらしくて、琥珀さんの一人勝ちだったらしい。

それで一週間過ごす部屋は右の奥から、僕、琥珀さん、りん先輩、左の奥から、リシアさん、瑠璃さん、真珠に決まった。


「あっ、そうだ、廉くん」


琥珀さんが部屋のドアを開け、入りかけたまま、僕に喋りかけてくる。


「夜、一人は怖いから、もしかしたら、廉くんの部屋にお邪魔しちゃうかも」


「は!? え!? 琥珀さん!?」


そのまま驚いている僕をただ一人廊下に置いて琥珀さんは部屋に入ってしまった。




***



「それじゃあ、今から本格的に働いてもらうよ」


「「「「「「はい!」」」」」」


「といっても、まだ全然混んでないからだれか二人ぐらいでいいんだけど…」


まだ、午前9時を過ぎたところ、海の家にも、海にもほとんど人はいない。


「ここが忙しくなるのは10時30分過ぎくらいだから、海を見てるくらいだったらいいよ」


濡れたら困るからねと甘楽さんが笑いながら言う。

確かに濡れてしまったら、そのまま働くというのは、衛生的にも問題があるだろうし、一旦、ログハウスに戻ってシャワーを浴びる手間も増えてしまうだろう。


「それじゃあ、本格的に仕事を始めていくよ!」


「「「「「「はい!」」」」」」

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