第69話 午前シフトの3人

「みんな、今も十分忙しいけど、そろそろお昼時だから、更に忙しくなるからね!」


「「「はーい!」」」


午前のシフトに入っている、りんさん、リシアさん、そして私は、お昼の忙しくなる時間帯の前にすでに疲弊しきっていた。


その最大の理由が、


「ねぇねぇ、このあと暇? 仕事終わったら一緒に遊ばない?」


ナンパだ。


私は初め、ナンパをされてそこまで悪い気分にはならず、逆に、自分に自信を持てるようになっていた。そして、たくさんナンパをされた私は、『こんなにナンパされるなら、廉くんを落とすのもきっと簡単に決まってる!』と思ってしまっていた。


しかし、その自信をへし折ることが現在進行形でも起こっていた。


「すみません、私、好きな人がいるので…そういうお誘いは…」


リシアさんの存在だ。

聞いたところによると彼女は日本人とロシア人のハーフ、女の私でも惚れてしまいそうになるくらいの美貌に、あの大きさの胸だ。

ナンパ目的で海に来ている人なら、ありもしないチャンスに賭けて、一度は彼女をナンパするだろう。

私より何倍もの数、ナンパをされているリシアさんを見たら、私がナンパをされた回数がちっぽけに見えてしまって、荻リシアという存在が、私にとっての大きな壁となってしまっていた。




***




「思っていた以上に多かったですね…」


「「そうだね…」」


私たち午前シフトの3人から午後シフトの廉くんたちに変わる数分前、私たちは午前中にされたナンパについて話していた。


「でも、やっぱり、リシアさんが1番多かったですよね…」


「そうでしょうか、瑠璃さんとりんさんと同じ位だったと思いますが…」


「いやいや、そんなことないよ! 」


「絶対に私たちよりも多かったって!」


「そう…でしたか?」


「「絶対そうだよ!」」


リシアさんはそう言って否定するが、それを聞く私たち2人は疑心暗鬼になっていたのだろう。彼女の言葉を謙虚と捉えることができず、素直に信じることができなかった。


「やっぱりハーフには勝てないかぁ…」


「でも…ハーフの血って凄いよね」


「そうだよね、だって…」


「キャッ! な、何するんですか! 瑠璃さん!」


私はリシアさんがぶら下げている私よりも数倍大きな2つのメロン…いや、スイカを持ち上げた。


「……重い、リシアさん、こんな重いのぶら下げてるの? 肩こり絶対ヤバいでしょ!」


「えぇ、最近は本当に酷くて…」


「ねぇねぇ、何でそんなに大きくなったの?」


「なんででしょうか? 私にもよく分からなくて…」


「もしかして! 揉んだら大きくなるみたいな?」


「そんなことするわけ…」


「えっ!? なになに!? やってるの!?」


「………いえ、何でもないです」


「えっ!? 何なの!? 気になるんだけど!!」


リシアさんが何を思ったのかすごく気になったのだが、


「みんな、そろそろ休憩から戻ってもらえる?」


と、甘楽さんに言われてしまったので、聞けずじまいとなってしまった。

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