第44話 怖い
「……私、廉くんから離れることにしました」
カフェでりんさんが放った言葉は私に衝撃を与えた。
「ど、どうしたの!? なんで急にそんなこと言うの!?」
「もう…耐えられないんです… 廉くんが…廉くんが…」
ポツポツと喋り始めたりんさんだったが、りんさんの目元には涙が溢れていた。
「ちょっと! ちょっと! 落ち着いて! どうしたの!? 何があったの!?」
泣いているりんさんを何とか宥めて、会話ができるくらいに戻すことができた。
「すみません…急に取り乱してしまって」
「大丈夫だよ。それで…何があったの?」
「私…怖いんです…」
「何が?」
「もしも、廉くんが私たち、もしくは他の誰かを選んでしまったら、私には…見向きもしなくなってしまうと思ったら…怖くなってしまって…だから…」
「だから?」
「距離を置くことにしました。昨日、バイトも辞めてきました」
「え!? バイトも辞めたの!?」
「はい…」
「な、何と言うか…凄いね…」
廉くんから距離を置くためにバイトまで辞められるなんて凄い行動力だと感心してしまった。
「それで…バイトも辞めちゃって、これからどうするの? というか、それでいいの?」
りんさんを応援しているわけではないが、本当にそれでいいのか、そのまま距離を置いて、離れることに後悔はないのかとただ単純にそう思ってしまった。
「一応、貯金はあるので、しばらくは大丈夫なんですけど…」
そのままりんさんは黙ってしまう、何か言うのを躊躇っているかのように。
数分経ち、黙っているりんさんに私はもう一度聞いた。
「りんさん的に、本当に廉くんから離れるのはいいの?」
「………」
「私は別にいいんだけどね。1人減るし、廉くんに選ばれる確率が上がるからね」
これは私の本心だ。実際、1人減れば廉くんに選ばれる確率は確実に上がる。
けど、そういう争いなしに、りんさんがそれで後悔はないのかが心配だった。
「私は…私は…廉くんと離れたくない! けど…それよりも…どうしても…怖いの…」
「じゃあ、怖がっているりんさんが自信を付けられるように、行こっか!」
「えっ? ど、どこにですか?」
「それは…」
結局、私からりんさんに聞くことはできなかったけど、りんさんが誰かに取られるのが怖いと思っているなら、私が思う最悪の事態にはなっていないのだろう。
まずは、何とかしてでも、りんさんが自信を付けられるようにしよう。
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