第67話 水着③ む、結んで貰えるかしら

『ど、どうして!? み、水着が!? 水着の紐がほどけかかってるの!?』


思わぬハプニングが起こってしまった、私の水着の紐がほどけかかっている…

このままだと、私の胸があらわになってしまう…

………ちょっと待ちなさい、よく考えるのよ、私。

このままにしておいて、彼に紐を結んでもらう…そしたら、きっと彼は少なからずドキドキしてくれるはず…そこに何かしらのアクションを起こして、彼を誘えば、そのまま…


 『ならば、ヤることは一つだけだ』




***




「あ、あなた、ちょっとついて来てもらえるかしら」


真珠が少し焦った様子で僕を呼び、外からは見えないような岩陰に移動した。


「どうしたの、真珠、そんなに慌てて」


「そ、それが…」


先ほどから真珠の腕が異様に胸の部分にあるので不思議に思っていたのだが、原因はそれに関することであっていた。

真珠が腕を胸の部分で組んでいるまま、僕の方に背を向ける。


「む、結んでもらえるかしら…、なぜか分からないけど、解けてしまって…」


「え! ま、まぁ…」


真珠の水着の紐を手に取り、結ぼうとするのだが…

もしも、この持っている紐を引っ張ったら、真珠の上半身を守る物は何も無くなってしまう…という事を考えてしまい。緊張してしまってうまく結ぶ事ができなかった。


「……上手く結べない?」


「ご、ごめん、真珠、ちょっと、もう少し待って」


その言葉がさらに自分を焦らせた。


「あっ!」


「キャッ!」


紐が十分に結べないまま手が滑り、真珠の水着を海に落としてしまった。


「本当にごめん! 真珠!」


「べ、別にいいのだけれど、は、早く水着を見つけてもらえないかしら」


「本当にごめん!」


「あっ! あった!」


「見つかったら?」


すぐ近くに流れていたのでそこまで時間がかかる事なく、真珠の水着を見つける事ができた。


「ちょっと! 真珠あっち向いて!」


見つかったと聞き、こちらに寄って来た真珠の当たり前だが何も身に纏っていない、真珠の上半身をばっちり見てしまった。


「別に…あなたに見られることは2回目だし、あなたになら、見られても文句は言わないし…」


「………」


「ちょっと、どうして黙るの?」


そんな事言われたら、意識しないようにしていても意識してしまう。


「む、結べたから! そ、そろそろ、バイトのシフトだから! 海からあがろうか!」


「えっ? もう少し時間はあるはずでしょ?」


「いや、念には念をだよ、早く上がろう」





***




「それで、あなたは海から上がらないの?」


「ごめん、真珠、先上がっててくれる? ちょっと無くし物しちゃって」


「この広い海で? 無くし物?」


「う、うん」


もちろん嘘だ。海から僕が上がれない理由は僕の下半身にある。


「見つけるのは絶望的だけれど、私も手伝うわよ」


「い、いや、いいよ! 多分見つからないと思うし…10分くらいで僕も上がるから!」


「10分くらいなら私も手伝うわよ」


真珠の僕に対する優しさが今の僕にとっては凄くありがた迷惑だった。


「し、真珠は髪が長いからシャワーを浴びたら乾かすまでに時間かかるでしょ? だから先にログハウスに戻ってて良いよ!」


「でも…」


「いいからいいから! 先帰ってて!」


何とか真珠を先にログハウスに帰し、10分後、僕もすんなり海から上がることができた。

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