第52話 海の家でのバイト①

「今日から1週間よろしくお願いします。滝山廉です」


「よろしくね、滝山くん。私は甘楽かんら、とりあえず最初に荷物を泊まる場所に置いてこようか」


「はい!」


夏休みも1週間ほど経った頃、僕は海に来ている。

海に来ていると言ったが、本当は海の家にバイトをしに来ている。

甘楽さんについて行くとこれから1週間泊まるログハウスに着いた。


「滝山くん、1つ謝らないといけない事があるんだけど…」


「何かあったんですか?」


「最初にこの海の家のバイトに応募してきたのが滝山くんだったんだけど、元より泊まり込みだったし、ちゃんとセキュリティもしっかりしてるから、女の子が応募してきても、同じログハウスで過ごしてもらうつもりだったんだけど…。そのあと応募してきた人が全員女の子で…」


「ということは…」


「廉くんには悪いけど、廉くん以外は全員女の子だから、頑張って!」


僕以外全員女の子? そんな偶然あるのだろうか僕以外に1人ぐらい男子の応募はなかったのだろうか? まるで誰かに仕組まれたような…


「とりあえず、一緒にバイトしてもらう女の子たちは共同リビングにいるから、まずは顔合わせからね」


「は、はい…」


自分以外のバイト仲間が全員女の子だなんて、どう考えても肩身が狭い思いをすることになるだろうが、こればっかりはしょうがないと自分を落ち着かせて、ログハウスのドアを開けると…


「遅かったわね、あなた。待ちくたびれたわよ」


「あっ! 廉くん、遅かったね!」


「夏休み、1週間シフトに廉くんの名前がなかったから、不思議に思ってたけど、本当に海の家で泊まり込みのバイトだなんて…」


「学校以外のバイト中の廉くんもカッコいいんだろうな…」


「……本当に海の家でバイトなんですね。琥珀さん」


見知った顔が勢揃いしていた。


「あれ? みんな知り合いなの? 早く言ってよ~、余計な心配する必要なかったのに~」


「………」


僕が海の家でバイトするのは知られていたけど、まさか、みんなも同じバイトをすると思っていなかった。


「知り合いだったら、大丈夫だね! 後はみんな、廉くんにこのログハウスの決まりを教えておいてね。 じゃあ、1通り説明が終わったら、海の家に来てくれる?」


そう言い終えると甘楽さんがログハウスを出て、どこかに行ってしまった。きっと海の家に戻ったのだろう。


「それじゃあ、今からこのログハウスでの注意事項を説明するわね」


「ちょっ、ちょっと待って! 僕が海の家でバイトするのを知ってた時って…」


「もちろん、その時には私たちのバイトも決まっていたわよ。あなたと一緒のね」

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