第97話
暫くすると男衆の1人がやって来て、組長がいる部屋まで案内された。
中に入ると、上座にあぐらをかいて座っている組長らしき男性が目に入ってきた。
その斜め向かいには、先程会話を交わした男性もいた。
真正面には、直人が彼等と向き合う形で座っていた。
「若葉、こっちにおいで」
直人が手を差し出して隣に座る様に促した。
若葉は言われた通りに直人の横に座った。
「組長、彼女が私の伴侶に選んだ女性です。
どうかお見知りおきを」
直人はそう言って頭を下げた。
この人が組長、私のお爺さん。。
産まれ育った屋敷に初めてやって来て、目の前には祖父がいる。
会う事が無いと思っていた人。
強面の威厳がある彼に、普通なら怖くなって真面に目を合わす事なんて出来ないだろう。
しかし血筋なのか、直人に慣れていたのか分からないが、若葉が物怖じする事はなかった。
「お嬢さん。名はなんて言うんだ?」
「。。若葉と言います」
「若葉さん、直人には次期イナス組若頭になって貰うつもりなんだが、、その事はご存知かな」
若頭?兄さんが。。
「横にいるのが直人の父で今の若頭なんだが。
わしは組長の立場を退いて、この拓也に組を任せようと思っている」
「。。!」
組長の拓也と言う言葉に、若葉の顔色が真っ青になった。
彼女は今にも直人に問いかけそうだったが、彼は若葉の方を見る事もなく、真っ直ぐ組長を見ていた。
「のぅ直人、その娘に次期若頭の嫁の重圧が受けとめられるのか?
見るところ普通のお嬢さんのようだが」
「組長、彼女は堅気の娘ですが芯が強く、イナス組の姐に相応しい女性になると思います。
それに私は、彼女以外伴侶にするつもりはありません」
「ま、待って下さい!
私は兄さんの奥さんには成れません!」
若葉は部屋中に響くような声を上げた。
「お嬢さん、直人の顔を潰さんでやって頂きたい。先程も嗜めたはずだが」
彼女の言葉を拓也が揉み消した。
勝がどうなってもいいのか?
奴を助けたいんじゃないのか?
若葉を見る拓也の顔はそう語っているようだった。
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