第79話

美味しかったコースが終わり店を出ようとした途端、従業員全員が2人に挨拶をした。

普通の女性なら驚くはずだが、直人との生活に慣れている若葉は、拓也の隣で堂々とした振る舞いを見せていた。


彼女の物怖じしない性格に、不思議と惹き込まれていく拓也。


次期組のNo.2になる彼には今まで数多くの女性が充てがわれてきた。

その世界から抜け出しアメリカの自由な生活を送ってきたが、日本に連れ戻され自暴自棄になっていた矢先に若葉と出会った。


命の恩人でもある彼女に好意はあったものの、側にいるだけでこんなに落ち着く存在になるとは思っても見なかった。


「本当に夜景が綺麗ね!屋上に行ったらもっとよく見えるのかしら」


「あぁ、今から連れて行こうと思っていたんだ。そこで少し酔いを覚そうか」


「あら、もう酔ってませ〜ん」


子供のように赤い顔をしてはしゃぐ彼女に、

さっきの凛とした態度は何だったんだ?と可笑しくなってしまう。


全く不思議な女性だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る