第68話
お披露目会が開催された。
イナス組の今後を左右する重大発言もある事から、かなりの人数が集まっていた。
組長が上座に座り、その斜め隣に直治が座った。
直治はこれだけの人達の中でも物怖じする事なく堂々としていた。
場慣れしているとはいえ、やはり次期組長に相応しいと皆が思ったようだった。
その様子を側で見ている雄也。
美鈴も誇らしげに見つめている。
一通りの挨拶が終わると、会場の奥から1人の女性が入ってきた。
見ただけでも高価だとわかる着物を見事に着こなし、凛とした紗代子が立っていた。
「こちらに来なさい」
組長が近くに呼び寄せる。
ゆっくりと歩いてくる紗代子に、皆は溜息を漏らして凝視する。
直治も息を呑んでいる。
なんて美しいんだろう。
自分の女性をエスコートしようと立ち上がる雄也に、組長は手で阻止する。
「今日皆に来てもらったのは、我が組に迎え入れる女性を紹介させて頂く為だ。
イナス組次期組長、直治の伴侶紗代子さんだ」
一瞬、会場内が騒めいた。
雄也はその場で立ち尽くしている。
美鈴の顔も真っ青になっていた。
1番驚いているのは他でもない直治本人だ。
「紗代子さん、直治の横に座りなさい」
組長に促されて紗代子はゆっくりと直治の横に並んで座った。
着物が崩れないようにと、フネが後ろから手伝っている。
そして、小さな声で坊ちゃま、紗代子様お幸せにと聞こえた。
直治はまだ理解できていない様子で、紗代子を見つめていた。
緊張と嬉しさで、真っ赤になっている紗代子。
「若い2人のこれからを皆に祝福してもらいたい」
組長が言うと、屋敷中に盛大な拍手が響いた。
「待って下さい!組長」
そこへ雄也が大声を上げた。
一体どうなっているんだ!どうして直治と紗代子が伴侶になるんだ!
ざわざわとその場の雰囲気が壊れかけた。
その言葉に
「全てはわしが決めた事だ!」
組長ははっきりと答えた。
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