第59話
「こちらになります」
屋敷内は一体どれほど広大な作りになっているのだろう。
また違う渡り廊下を歩くと、離れのような部屋が二つ並んであった。
紗代子に用意された部屋はそのうちの一つで、1番奥の所だった。
フネの説明では、この二つの部屋は普段は来客用として使用しているらしい。
またこの屋敷は組長の好みで地下水を掘り、蛇口を捻ると全て温泉水になっているという。
各部屋には小さな露天風呂が備わっているらしい。
但しこの来客用の部屋にはお風呂はなく、そのかわり紗代子が使用する部屋を出た所に大きな露天風呂があり、来賓の方々はその露天風呂に入るようだ。
この風呂は特別な人、屋敷では組長、若頭(直治)、来賓しか入る事が出来ないしきたりになっているそうだ。
「紗代子さんは私たち女中が入るお風呂を使用してくださいまし。
今日はお疲れだと思いますので明日からお屋敷の案内、イナス組のしきたり等お教え致します。
それと、、」
フネはニコッと笑い
「直治様が先程こちらの露天風呂で待っていると仰っていましたよ。
旦那様はよほどの事がない限り夜中にこちらのお風呂をご使用になりません。
直治様のお背中を洗って差し上げて下さいませ」
紗代子は顔が真っ赤になった。
フネが頭を下げて去っていくと、紗代子は部屋の中を見回した。
綺麗な花束が至る所に飾られていて、必要な家具は殆ど用意されていた。
(こんなお部屋、私には勿体ないわ)
紗代子はため息をついた。
部屋の片隅には寮から持ってきた荷物が運び込まれていた。
紗代子はその中から明日の着替えなどを用意していると、いきなり後ろから声がした。
「紗代子、遅い。茹蛸になってしまうよ」
振り向くとタオルを腰に巻いた状態の直治が笑いながら立っていた。
「直治さん!」
紗代子は直治を見て嬉しくなったが、タオル1枚姿の彼にはっとしてまた後ろを向いた。
「何を恥ずかしがっているんだか。
紗代子も一緒にはいるんだよ。
早くおいで、待っているから」
直治は半ば呆れてそう言うと、また露天風呂の方に戻って行った。
(どうしよう、さ、さすがに私も裸だよね。。)
紗代子はドキドキしながら着ていた服を脱いでタオルを持って直治のいる露天風呂に向かった。
夜景を見ながら湯船に浸かっていた直治が、紗代子に気がついて早くおいでと手招きをした。
彼女は恥ずかしがりながらお湯を身体にかけて湯船の中に入った。
「見てご覧、夜景がご綺麗だろ。
いつかこうして紗代子と一緒にこの夜景を見たかったんだ」
直治は幸せそうな顔をして彼女に言った。
「ほんと、綺麗。。」
屋敷は都会から少し離れている為空気も景色も綺麗だった。
紗代子が夜景に夢中になっていると、直治が紗代子の肩を抱き寄せた。
「やっと2人きりになれた。。」
直治の顔が紗代子に近づき、彼女の唇を奪った。
紗代子も手にしていたタオルを離して直治の首下に腕をまわした。
「綺麗だよ、紗代子。。」
直治は彼女の身体の感触を味わいながら自分の物だと言わんばかりに紗代子の裸体にキスをしていった。
湯船で火照っているのか恥ずかしさなのか紗代子の顔は真っ赤になっていたが、直治の愛情を受けて今の紗代子は幸せだった。
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