第90話
「兄さん。。お父さんって殺されたの?
どうして?
どうして母子家庭になったの?
手紙には何も書いてなかった。
お母さんが時々悲しい顔をしていたのはその為なの?」
若葉は涙を浮かべながら問いかけた。
顔を背けて何も答えない直人。
「私、拓也を愛してる。今更そんな事を言われても。。」
「愛してるだと?ふざけるな!
女将さんがどれだけお前の事を心配していたかわかっているのか?」
そう、紗代子は彼女に普通の生活を望んでいた。
直人が若葉に兄以上の思いを抱いている事を知った時、紗代子はその気持ちは墓場まで持って行って欲しいと彼に告げたのだ。
極道の嫁にはさせたくない。
紗代子の切なる願いだった。
直人は彼女が亡くなってからも、ずっと自分の気持ちを抑えながら生きてきた。
若葉がいつか普通の男性と一緒になる時が来る事を恐れながら。
その相手がよりに寄って極道、それも元若頭を襲った奴の息子だと?
直人は今まで抑えていた気持ちが音を出して崩れていく感じがした。
「兄さん?」
「俺は許さない!あんな奴にお前を奪われるなど」
そう言うと若葉を抱き抱え、ベッドの上に放り投げた。
驚く彼女を見上げながら、着ている服を脱ぎ取ると、強引に唇を奪った。
息も何もできない程の荒々しい直人のキス。
手足をバタつかせながら拒む若葉に、
「あんな奴にお前をやるぐらいなら、俺が。。
俺がお前を奪う!」
拓也からもらったネックレスをぶち切り、キスマークの上に自分の歯形をつけた。
「やめて!兄さん」
嫌がる彼女の言葉を遮りながら、直人の気持ちが若葉の身体に刻まれた瞬間だった。
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