第70話

紗代子と直治の手紙のやり取りはここで終わっていた。

その先何があったのか、雄也や美咲はどうなったのかは分からなかった。

全てを知っているのは直人なのだろう。

でもあえてそれを聞こうとは思わなかった。


私は両親に愛されていた。

それだけで十分だったから。



若葉は毎日忙しく看護師として働いていた。

引越ししたマンションにも慣れて充実した生活を送っていた。


友人達に合コンなど誘われる事があるが、全てを直人が反対する為彼氏は中々出来なかった。


彼はかなりのイケメンで、若葉を迎えに来た時は必ず女性達に囲まれていた。


「兄さん、相変わらずもてますなぁ。

私に構わずデートしてきていいよ。」

若葉は呆れて言った。


「なんだ?妬いてるのか?」

ニコリと笑われた。


「今日はディナーの予約をしてるんだよ。若葉が好きなイタリアンだから」


食べ物に目がない彼女は嬉しそうにはしゃいでしまった。


(まだまだ子供だなあ。)


直人は笑いながら車を走らせた。

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