第21話

自分の気持ちを言う前に、院長から直治の事に釘を刺された紗代子。


最初から全てこうなる事を院長は分かっていたのだろうか?


それから先は、紗代子の配属先の話になり、院長はソファーから立ち上がった。


紗代子も立ち上がり、複雑な気持ちのまま頭を下げて部屋を出た。


よく考えると、紗代子はイナス組の場所も直治の連絡先もわからない状態だった。


ただ院長からは、訪問診察で同行するようにという事だったので、その時に直治に会える。

それまでは、自分の気持ちを整理する事も出来ると思った。


配属先での仕事に戻った紗代子。


徐々に以前行っていた忙しさに体が戻ってきた。


あれほど特別室での内容を知りたがっていた同僚達も、通達が出たのか誰1人その事を聞く人はいなくなっていた。


しばらくして、院長から明日イナス組の訪問診察に行く事を聞かされた。


訪問診察に行くのは院長と紗代子のみで、組から送迎車が迎えに来る事になっていた。


朝になり、院長に同行して病院の裏側に迎えに来ていた黒い車に乗り込んだ。


車内には、以前交代で直治に付いていた男性が運転していた。


1時間半程走っただろうか、車は広い敷地内に入って行き、玄関前に車を止めた。


男衆の1人が車のドアを開けた。


車を降りると、何人かの男衆が院長と紗代子を玄関で待っていた。

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