第20話
寮に戻った紗代子は、今までの疲れが出たのか、横になったまま気がついたら朝になっていた。
時計を見て紗代子は急いで飛び起き、まだ
持ち帰った荷物を開けてもいなかった荷物の中から、仕事に必要な物だけカバンに詰めた。
顔を洗い、適当に化粧をして髪を束ねた。
少し早めに寮を出て病院へと向かった。
今日まで他の看護師達とは関わる事がなく、病院内の情報が分からない紗代子は、不安に思いながらもロッカー室に入ってナース服に着替えた。
途中から同僚の看護師達が次々とやってきた。
「紗代子、今日から戻ったの?」
看護師達が声を揃えて聞いてきた。
みんな紗代子が特別室の担当が終わった事を知らされていなかったようだった。
彼女は頷いた。
「特別室はどうだったの?みんな心配していたのよ」
みんな興味深々で紗代子に近づいて来た。
今までの事をどこまで話したらいいのかわからない彼女は、院長に呼ばれているからとそそくさと部屋を出た。
とにかく院長に会って、今までの事やこれからの話をしたかった。
院長室に着いた紗代子は、ドアをノックした。
中で声が聞こえたのでゆっくりとドアを開けると、院長が机に座っているのが見えた。
「おはよう御座います。」
紗代子は院長に挨拶をした。
「おはよう、今まで大変だったね。よくやってくれた。」
院長はそう言うと机上から内線電話で秘書にコーヒーを頼み、ソファに移動した。
紗代子にも座るように促した。
彼女は言われるままソファに座り、院長を見た。
紗代子が何を言わんとしているのか察しているようで、院長の方から話だした。
「紗代子君、分かっていると思うが。特別室で行っていた事は他言してはいけないよ。」
「はい、わかっております」
紗代子は即座に答えた。
「あの。。」
彼女が話を続けようとした時に、秘書課の女性がコーヒーを運んで来た。
紗代子は女性にお礼を言った。
しばらく話は途切れた。
院長に直治との事をどう説明したらいいのか、まだわからなかった。
院長はコーヒーを口にして紗代子に聞いて来た。
「私はしばらくイナス組に診察に行かなければならないのだか、紗代子君も同行は大丈夫かな?」
院長は紗代子の顔を見た。
一瞬どきっとしたが、
「はい。大丈夫です。」
と紗代子は答えた。
すると院長は
「イナス組の、直治様とは看護師という立場以外は近づいてはいけないよ」
そう紗代子に言った。
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