第35話

紗代子はしばらくその場所から動かなかった。


しかし、仕事疲れが出てきたのか睡魔が襲ってきた。

紗代子は隣のベッドルームのドアを開けた。

そこにはクイーンサイズのダブルベッドがあった。


心臓がドキドキして、思わずドアを閉め、慌てて雄也に言った。


「私はソファで横になりますから、雄也さんはベッドでお休みになって下さい」

紗代子は流石にこのベッドで休む気にはなれなかったのだ。


すると雄也は座っていたソファから立ち上がり、紗代子に近づいた。

「雄也さん、待って。これ以上近くに来ないで」

紗代子は叫んだ。


雄也は歩いている足を止めた。


「約束。しただろう?私は何もしない。

さっきはキスをして悪かった。もうあんなことはしない。」


「私がソファで横になるから。

直治の付き添い看護をしていた時も、君は隣の部屋で過ごしていたんだろ?」


雄也は少し苛立ち立った話し方をしたが、表情は穏やかだった。


雄也は枕とパジャマを取ると、ソファに再度腰掛けた。


紗代子は病院での最後の日を思いだし、顔が真っ赤になった。


「とにかく、私シャワーをお借りします。」

紗代子は慌ててベッドルームに入り、ドアを閉めた。


着替えも何も持ってきていない。


とりあえずシャワーを浴びてそれから考えよう。

紗代子は急いでシャワーを浴び、バスローブを羽織って髪を乾かした。


途中で眠気が襲ってきて、ベッドの上でそのまま寝てしまったのだった。

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