第36話

カバンの中から携帯が鳴った。


紗代子は携帯にタイマーをセットしていたのだ。


まだ夢の中だったが、段々と昨日の出来事を思いだし、ハッとして起き上がった。


朝6時半


昨日の記憶が曖昧だ。


シャワーを浴びて髪を乾かして。。それから多分倒れるように寝入ってしまったのだろう。

起き上がった時には、ちゃんとベッドの中に入って毛布が掛けられていた。


携帯のタイマーを消し、隣の部屋のドアを開けた。


雄也はソファでパソコンをしていた。


「おはよう、よく眠れたかい?ドライヤーの音がずっとしていたから心配になって覗いたら、そのままで寝ていてびっくりしたよ。」

雄也は笑いながらパソコンの手を止めた。


「あ、ごめんなさい。私全然覚えてなくて。。

紗代子は慌てて誤った。


「院長から聞いたよ、今日は昼出勤なんだろ?着替えて朝食を食べに行こうか」


「いえ、私着替えも何も用意してないから。今から寮に帰って支度をします。」


紗代子はそう言うと、雄也に頭を下げて急いでベッドルームに戻った。


(昨日は何もなかったみたい、良かった)

心の中で安堵した。


紗代子はベッドをささっと整えて、昨日着ていた服を着ようした。


(え?私の服は?)


紗代子の服が全て無くなっている事に今気づいた。

紗代子の頭が真っ白になってしまった。


部屋から飛び出し、

「雄也さん、私の服はどうしたんですか?私着替え持ってきて無いんです」

紗代子は叫んだ。


コーヒーを入れていた雄也は、


「ん?紗代子さんの服?

ああ、クリーニングに一緒に持っていったかなあ。此処に来たら私の服は全てクリーニングに持っていって貰うことになってるんだ」


(えー?なってるんだじゃない。

私どうやって帰ったらいいの?)


あたふたしている紗代子をよそに、雄也はコーヒーをテーブルに置いた。


「心配ないよ、下に服が売ってあるから電話して何着か持ってきて貰うよ。

試着して気に入った服を買えばいい。

下着も化粧品も有るから」


雄也はコーヒーを紗代子に勧めた。


「急いで帰ろうとするからだよ。

私はもう少し一緒にいたい」


(やっぱりついてくるんじゃなかった。。)


紗代子は深く深く反省しながら、雄也の入れてくれたコーヒーを飲んだ。


その時、後ろから雄也が抱きしめてきた。


紗代子は突然の事にコーヒーを落としそうになった。


「やっぱり好きだなぁ」


雄也は紗代子の耳元で囁いた。

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