第95話

(強面の人ばかりだと思っていたけど、普通っぽい男子もいるんだ)


池に餌をばら撒きながら、カッチンとは友達になれそうな気がして少し嬉しくなった。


一方、屋敷内では、

血相を変えて若葉を探している女中達がいた。


「おフネさん、どうしましょう!まさか敷地内で直人様のお連れの方が行方不明だなんて。

旦那様達に知られたら大変な事になってしまいます」


若い女中の1人が泣き叫んでいた。


そうとは知らずに餌をやり終えた若葉は、ゆっくりと部屋に戻ろうとしていた。


途中、あんなに静かだった屋敷内が何故か騒々しい。


若葉は不思議に思いながらも、まさか自分が探されているとは思ってもみなかった。


「お嬢様!どちらにいらっしゃったのですか?皆で探し回っていたのですよ!」


見つかったと同時に、彼女は早速怒られてしまった。


「すいません。庭を散策していたら立派な鯉が泳いでいて見入ってしまいまして。。餌をあげていたら遅くなりました」


若葉は申し訳なさそうに頭を下げた。


「餌やりですか?なんて事を!」



「そんな。。対した事ではありません。

私は頼まれてやっただけですから」


若葉の言葉に、彼女達の顔色が真っ青になった。


「頼まれた?誰にですか?

お嬢様にそんな事をさせたなんて解れば、私達は首になってしまいます」



首になるって、なんて大袈裟な。


でもどうしよう。カッチンに迷惑がかかってしまう。。


「私が庭に出たのがいけなかったんです。どうか内密にしてください」


彼女は何とか説得させようとしていた。


「そうはいきません。

この事は直人様に報告しなければなりません。

誰に会ったのか教えていただけますか?」


年配の女中が若葉に近づいてきた。


「あの、直人兄さんには私から話します。ですから。。」


「その必要はない!」


突然後ろから大声がした。


振り返ると、そこには着物姿の男性が立っていて、彼の側にはボコボコに殴られたカッチンの姿があった。




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