第6話

母のお葬式は兄が全て準備をしてくれた。


母の希望もあり、誰にも知らせる事もなく、質素に行った。


脱力感で何も出来ない私の代わりに、兄と、昔父にお世話になったというイナス組の男の人達が訪れた。


彼らは、私の顔を見て懐しむように、涙を流しながら私に何度も土下座した。

バタバタと式は終わり、兄と私だけの質素なお別れをした。


それからは何もする気がなく、私は寝込んでしまった。


これから私はどうしたらいいのか。

大好きだった母はもう側にはいない。

どうやって生きていけばいいのか。


今頃になって涙が溢れてきた。

そして、知らぬ間に寝入ってしまった。


気がつけば、兄が横に座っていた。

「体調はどうだ」


いつもの優しい声で聞いてきた。


「兄さん、私これからどうしたらいいかわからない。

お母さんはもういないってわかっているのに、どうしてもそれが受け入れられないの。一人ぼっちになってしまった。」


私は溢れる涙をこらえながら言った。


兄はじっと私を見つめていたが、急に立ち上がった。

そして、持って来ていたかばんの中から束になった封筒を私に渡した。


「これは女将さんから預かっていたものだ。何かあれば若葉に渡して欲しいと言われていた」


「これは、、お父さんとお母さんの、、

二人の手紙?」

兄は頷いた。


「若葉、気持ちが落ち着いたら読んでごらん。多分悲しい内容も書いてあるかもしれないが、女将さんはこの手紙を読んで若葉に何か伝えたかった事があるんだと思う。

それから、若葉は一人じゃない。

私がいつもお前の側にいる。

いつもお前を守る。」


そう言うと、兄は私を抱き寄せた。

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