第84話
どうしてこんなにイライラするんだ。
直人の胸が赤く腫れあがっていたが、それよりも抑えきれない苛立ちに怒りがこみ上げていた。
今までも若葉から男子生徒の話を聞く事があった。
直人はその度に校門で待ち伏せをしては睨みをきかせて追い払っていたが、拓也に会った時はそうはいかなかった。
俺の顔を見ても動揺すらしなかった。
むしろ自分と似た威厳の様なものを感じてしまった。
若葉も若葉だ。
あいつを必死に庇いやがって。
冷静沈着と言われる直人がこんな風になるのは初めてだった。
車で屋敷に向かう途中、若葉のマンション前を通りかかると、数人の女性が紙袋を持って立っているのが見えた。
そうか、、今日はチョコの日か。
直人は思い出しながらマンション前に車を止めた。
すぐさま彼女達が車を取り囲み、運転席を覗きこんできた。
「妹の自宅前で待ち伏せするのはあんまり関心しないな」
直人はきつい口調で嗜めた。
それを聞いて申し訳なさそうな顔をする彼女達。
「今日はどうしたのかな?若葉に用事?」
と、さっきとは真逆の優しい態度で接した。
「私達、直人さんにチョコレートを渡したくて。。
若葉さんに聞いても貴方は来ないんじゃないかって言われました。
そうしたら途中で男性と何処かに行ってしまったんです」
「男性?」
直人の顔色が変わった。
「黒塗りの車が急に現れて。。彼氏さんかなと思っちゃうぐらい手を握りあって車に乗り込んだんです」
黒塗りの車?拓也なのか?
「直人さん?大丈夫ですか?」
段々と真っ青な顔になっていく直人を彼女達は心配して聞き返した。
「すまない、じゃあ誘拐ではないんだね。安心したよ。
また何かあれば知らせてくれるかな?」
直人の優しい声にメロメロになりなから
勿論です!と彼女達は頷き、持っていた紙袋を手渡した。
直人はマンションから離れ車を走らせながら、拓也の正体を直ぐに調べるよう男衆に命じた。
そして、自らも若葉の友人達に片っ端から連絡を取った。
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