第47話

(嘘でしょ!どうして雄也さんがここに来るの?)


紗代子が立ち尽くしている間に、ベルボーイは部屋の片隅に荷物を置いて、軽く頭を下げ出て行った。


(院長はこの事を知っているのだろう。わかっていてこのホテルを私に。。

ひょっとしたら老人ホーム行きも最初から院長と雄也さんが一緒になって考えた事?)


紗代子は自分の単純さを今更ながら悔やんでいた。


(二人で此処で過ごす訳にはいかない!絶対に!とにかく車を借りて違う宿を探そう)


頭の中を整理して、紗代子は一階のフロントへ向かった。


「すいません。私レンタカーを借りたいのですが何処に行けば借りられますか?」


紗代子が係りの人に尋ねたその時、後ろから腕をまわされ抱きしめられた。


荒い息と共に懐かしい声で


「お前は、、離れるなって言ったはずだ」


「え。。?直治。。さん。。?」


振り返ろうとする紗代子を、直治はそのまま強く抱きしめたままで


「どれだけ探させたら気が済むんだ。。会いたかった。」


直治は紗代子に言った。


懐かしい腕、抱きしめ方。。病院で一緒に居た時の事を思い出した。


「直治さん。。直治さん。。本当に貴方なの?」

紗代子は涙が溢れてきた。


「お前は全然変わってないな。いつも私を振り回して楽しんでいる」


直治は抱きしめていた力を抜いた。


紗代子はゆっくりと後ろを振り返った。


そこには、今まで会いたくて会いたくて仕方がなかった直治が立っていた。


「直治さん。。どうして此処にいるの?体は大丈夫なの?。。」


「紗代子、、そういきなり質問責めにしないでくれないか?」


直治は笑いながら紗代子のおでこに自分の顔を近づけた。


そして、優しくキスをした。

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