第86話
拓也が出かけて1人になると、この部屋は余りにも物が無さすぎる事に気がついた。
なんだか落ち着かない。
台所に行ってシンクを見ても、ほとんど使われた形跡はなかった。
本当に自炊はしていないのね。
今度は、拓也が着替えをしていた部屋の前に行ってみた。
ドアが半分開いていたので、(ちょっとだけならいいよね)と心の中で思いながらそーっと中を覗いてみた。
部屋の真ん中にキングサイズのベッドが置いてあって、仕事用の机?と、備え付けのクローゼットがコンパクトに配置されていた。
普段はこの部屋だけ使っているのかしら。
若葉は大きなベッドにちょこんと座ってみた。
かすかに拓也がつけている香水の匂いがする。
なんだか彼がいるみたいで少し心が落ち着いてきた。
若葉は彼から貰ったネックレスを触りながら、抱きしめられた感触を思い出して体が熱くなってきた。
親が極道でアメリカ帰りの社長さんかあ。。
最初に出会った時は傷だらけで服も破けて悲惨な姿だったのに。
彼は私のお父さんのように若頭か組長になる人なんだろうか。
アメリカで自立し、社長になっても思い通りの生き方が出来ない組織のしきたりって。。
お母さんはそんな組織の中で幸せだったのかしら。
若葉は亡くなった母の事を思い出すと涙が溢れてきた。
そして、泣き疲れてそのまま深い眠りに落ちていった。
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