第77話

待ち合わせ場所は渋谷の忠犬ハチ公前だった。


平日の昼間なら混まないだろうと若葉から指定したのだが、読みが浅かった。

同じ位の年の人か年下の人達が待ち合わせをしていて、探し出せるか分からなかった。


まだ時間前だったが、後ろから聴き慣れた声が聞こえてきた。


振り向くとスーツ姿の拓也が笑って立っていた。

出会った時の姿をイメージしていた若葉は驚いて目を丸くした。


「この場所凄い人だね。でもすぐ分かったよ」

彼はそう言うと、慣れたように彼女の手を握った。


「あ、えっと。。」

急に頭の中に奈々の言葉が浮かんできて顔が真っ赤になってしまった。


「迷子になったら困るから手を掴んでいていい?」


「あ、そうだよね!迷子になるからだよね」

若葉は自分がなにを言ってるのか分からずおどおどして言った。


2人で手を繋いで歩いている姿ってどう写っているのだろう。

拓也、凄くカッコ良いんだけど。。

若葉は奈々に服装を相談して良かったとつくづく思った。


「渋谷はよく分からないから車で移動するよ」


そう言うと彼は手をあげてタクシーを止めた。


「六本木駅近くまで」


後部座席に2人で座るとやっと落ち着いた感じになり繋いでいた手を同時に離した。


「私六本木の方は詳しくないんだけど」


「大丈夫。俺が詳しいから。

昼間より夜景が綺麗なんだ」


夜景?ですか?

それってお泊りという事でしょうか。


若葉は咄嗟に彼から離れて座り直した。


「どうした?気分悪いか?」

彼女のよそよそしい態度に逆に心配する拓也。


はぁ、やっぱりデートって疲れるー!

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