若葉の生い立ち

第2話

私の母はいつも優しく、そして凛とした美しさを感じる人です。

私を無条件に愛してくれる人。

彼女の愛に包まれて、裕福とまではいかないけれど、私は愛情を一杯に受けて育っていきました。

そんな母が病に侵され、あとわずかな命だなんて。。

私は悲愴感で心が折れそうになっていました。

寝床で病と闘っている母の姿を見ていると、とても痛々しく、ただただ痩せていく母の背中を摩る事しか出来ない虚しさを感じました。

そんな中、母はある日私に「若葉、あなたに言っておかないといけない事があるの」と切り出しました。

「なあに、お母さん。」

「今まであなたに言わなければならないと思いながら、言えなかった。

あなたが理解出来る時が来たら話さなければならないと思っていたの。」

母は辛そうな顔をして私の顔をじっと見つめていました。

私はなんとなく父の事、血の繋がりがない兄の事が頭に浮かびました。

「お母さん、話たくなければ私は何も知らなくて大丈夫だよ。お母さんが私のお母さんで良かったと思ってるの。それだけで幸せなの。」

「ありがとう若葉、でもあなたは知らなければならないの。」

母はそういうと、枕の中に忍ばせていた鍵を私に渡しました。

「この鍵は？」

私が不思議そうに尋ねると、母は棚を指差し、開けてほしいと言いました。

私は言われたとおりに棚を開けました。

すると、棚の中に鍵が掛かる引き出しがありました。

「こんな所に引き出しがあるなんて知らなかった」

私はびっくりしながらも母の言われるまま鍵を開けました。

すると、中には古びた茶封筒が入っていました。