第33話
雄也はベルボーイに車のキーを渡すと、紗代子の手を握りしめホテルのロビーに入った。
「お待ちしておりました」
フロントの男性が雄也の所までやって来て深々と挨拶をした。
雄也は軽く会釈し、男性からルームキーを受け取ると、直接部屋に向かおうとした。
男性が部屋まで案内をしようとしていたが、雄也はそれを断った。
紗代子の手をずっと離さずエレベーターへと歩いていき、ルームキーをかざして階のボタンを押した。
部屋は最上階らしく、紗代子はただ黙ってエレベーターの上がる番号を眺めていた。
雄也は紗代子の方に振り向くと、クスッと笑った。
「怖いかい?顔が強張っているけど」
エレベーター内は四方金色で、鏡のように2人を写していた。
紗代子の顔は緊張しているように見えた。
「。。別に」
紗代子は答えた。
雄也は握り締めていた紗代子の手を上に挙げ、紗代子の顔に自分の顔を近づけた。
紗代子は一瞬ドキッとしたが、雄也の顔から目を逸らした。
しかし、雄也はそれをさせずに、紗代子の顎に手を当て、自分の方に向けさせた。
じっと見つめる雄也。
紗代子も雄也を見つめた。
そして、雄也は紗代子の唇に自分の唇を重ねた。
片手は握り締められていて、身動きが出来ない。
雄也の唇から逃れようとしたが、力では叶う訳がなかった。
紗代子は、最上階に着くまで唇を奪われた状態でいるしかなかった。
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