第81話
シンデレラではないけれど、まもなく0時を迎えようとしていた。
2人にとって色々な事を話した至福の時間が終わろうとしていた。
これがデートというものなのか。
兄さんがいつも女性に囲まれているのを見慣れていた彼女だったが、異性と一緒にいる事は悪くないなぁと初めて知った。
「遅くなったな、家まで送っていくから」
拓也はタクシーを拾い、若葉の自宅に向かった。
途中で携帯を見ると、兄からの着信が一杯になって入っていた。
(うわ、見なければよかった。。)
若葉はため息をついた。
「どうした?疲れた?」
彼女の態度が急に変わったので、心配して顔を覗き込んできた。
「えっと。。兄さんから着信が入っていたの。心配してるみたい」
「そっか。今度は若葉の兄さんにも合わせてくれないか?ちゃんと話をしてみたいんだ」
拓也と兄さんか。。合わせてまともな話なんて出来るのかしら。。それに拓也はイナス組とは違う組織の人間なんだけど。。
考えただけでも恐ろしい。
色々妄想をしていると、知っている道に帰って来ていた。
しかし、遠くを見た瞬間に見慣れた車が止まっているのがわかった。
「ちょっと待った!運転手さん、此処で降ります!」
若葉は慌てて叫んだ。
タクシーは驚いたと同時に急ブレーキをかけて
止まった。
後部座席の2人は危うく頭をぶつける所だった。
「大丈夫ですか?」
運転手は少し不機嫌そうに後ろを向いて尋ねてきた。
拓也にも自宅横に車が止まっているのが見えたのだろう。
急ブレーキよりも違う意味で心配しているようだった。
「すいませんでした!拓也、今日はありがとう。帰るね」
若葉は急いでドアを開けるとタクシーから飛び降りた。
「若葉!」
呼び止められて振り返る彼女を拓也は強く抱きしめて
「気をつけて、Dream of me my hun」
優しい声でささやいた。
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