9歳 競馬場①


屋敷の政務室でフォークさんが領地の収支表を持ってきた。


「フォークさん、他の領地に比べるとうちの領地の運営はどうなんですか?」


「今は国からの補助もありますが、それを抜きにしても黒字経営ですね。現在、領地の発展速度は異常とも言えます。まだまだ発展の余地もありますし当分は予算に余裕はあります」


「なるほど。では領地の皆さんは普段はどんな娯楽をしているんですか?」


「娯楽ですか?そう言われると特にないですね。しいて言えば温泉くらいでしょうかね?」


「では質問をかえて、王国で賭博に関するルールはあるんですか?」


「賭博に関しては特に法律は用意されてません、真面目な国民性ですので賭博で身を落とすようなことは余り聞いたことは有りません」


「動物レースと賭博法を作りたいですが可能ですか?」


競馬、競犬の説明と私が胴元であることやギャンブル依存症についての説明をする。


「なるほど…依存症ですか。それであれば賭金の上限設定などしたほうが良さそうですね。あくまで娯楽の範囲で楽しめるルールを立案いたします。レースは観光の目玉になる可能性が高いので是非やりましょう」


「皆が太陽の日に遊びに来られるような娯楽の場所です。声を出して応援すればストレス発散もできるでしょうし、遊び場もあれば子供たちも楽しめます。あとは皆が参加できるイベントもあると良いですね。朝から初めて昼に終わる、そのあとは屋台でご飯を食べて温泉に入って家に帰る。月に1〜2回はこういう行事があれば領民の息抜きになって喜ぶのかなと」


「わかりました。リゼル様のお考えをすぐにまとめてきますので少々お時間を下さい。リゼル家文官総出で取り掛かります!」


その後もフォークさんと色々と娯楽について語り合った。



3日後。


「リゼル様、競馬・犬法の立案ができましたので、お目を通していただけますか?」


「早いですね…無理してないですか?ちゃんと寝てますか?」


「大丈夫です。閣下の下で働いている頃を思い出せば大したことはありません。代官や文官たちもやる気十分でしたのですぐに完成いたしました。場所の選定や遊具、イベントなどのアイデアも用意してあります。よろしければリゼル様の許可が出ましたら閣下にこのアイデアを見せに行ってもよろしいでしょうか?」


「閣下にですか?私は別に良いですけど」


「はい、私どもの予想ですと王都からも競馬の観戦に来る人々が多いと思います。そうなりますと領地に多数の金が流れます。閣下と言いますか王国にもこの興行に参入してもらったほうが安全面などの強化が可能になるかと思います。


例えばですが村の人口だけでしたら警備も容易ですが、それ以上の人々が領地に来る場合は警備も増やす必要があります。


閣下のお許しが出れば、騎士団の参加を促せます。イベントの時間に騎士団の演舞や実技を見せることも可能です。王都近くのリゼル村であれば普段の訓練成果を遊びに来ている王都民に見せることで彼らのやる気にもなりますし、警備面の負担も軽減できます」


「なるほど。騎士団が普段どんなことをしているかはわかりませんもんね。見てもらうには良い機会と場所の提供になるわけですね。フォークさんのことですから他にも思惑があるんですよね?」


「はい。今のところですと1回の開催では馬5頭のレースが2回、犬のレースが1回です。交渉次第ですが騎士団所有の戦馬での迫力のある戦車レースを追加できないかと。開催日に王都からどれくらいの人が流れてくるかはわかりませんが道中の整備の予算を申請できる可能性があります。予算が降りれば往復の馬車も用意し、利益もあがるかと」


「戦車レースは面白そうですね。そうなれば前日から領地にきて宿泊していく王都民もいる可能性があるんですね」


「はい。宿は現在も複数建築中ですが不足すると予想していますので簡易の宿泊施設も建築予定です」


「わかりました、お任せします。最初は領民の娯楽と思いましたが思ったより大事になりそうですね」


「リゼル様の思いつきは大概が王国に影響あるものですから…」


「ははは…」



2日後。私とフォークさんは閣下に呼び出される。


「リゼル坊、レース場と賭博に関する法案は良いアイデアじゃな、計画書を見させてもらったが王国も噛ませてもらうぞ」


「はい、それは是非お願いします。私はアイデアを出しただけでフォークさんと文官達がほとんど用意してくれたものなので」


「なに、文官共はそれが仕事じゃ。アイデアを出すのが大事なのじゃよ。完成したら陛下と儂も見学に行く予定じゃ、陛下に話したら政務を休んで行くと言い出しての、困ったもんだ…」


「ははは…陛下らしいですね」


「うむ、それでのフォークの計画書通りに騎士団の演舞と警備、戦車レースを毎回提供する。騎士団長に話したら分隊で取り合いになっていたぞ。普段、目立つことないから目立ちたいのかのぉ…。概ね、計画書通りで問題はない。そのうち、王国中の馬好きの貴族共がレースに参加したがるはずじゃ、そうなれば陛下の名前を使ってレースをする予定じゃ。頭の中に入れておいてくれ」


「はい、わかりました。これからルール等をレース場の完成までに考えます」


「細かいやり取りはフォークに伝えておくからの雑務はやらせておくと良い。リゼル坊は伸び伸びと良いアイデアを出すようにな、賭博法は王国で適用できるように官僚に指示は出しておるから任せておけ。レース場の予算は国からも人と金の補助は出すから早急に完成させるようにな」


フォークさんの予想通りの結果になった。


これが将来の王国レース開催の流れに繋がる…

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