9歳 授与式③
調印式と私の授与式が終わり、控室へと戻ると陛下と閣下と父様が控室へとやってくる。
「急に召喚させて悪かった。第三王子のふくれっ面が妙に気になってな使節団への牽制の意味合いで利用させてもらった。子供が拗ねているだけなら問題はないのだがな」
「陛下も突拍子もない行動はそろそろ良い年齢なのですから控えていただきたいですな。今後はきちんと自分の立場を重んじた行動をとって頂けないと困ります」
「ほら、牽制にもなっただろうし結果は良かっただろう?各家もやる気を出してくれたしな。使節団にも賢者と魔族の存在をきちんと理解させれたんだし…ダメか?」
閣下に小言を言われて陛下は頭をポリポリと掻いている。
「まぁ良いとしましょう。リゼル坊よ、事の経緯を簡単に説明する。カズール王国の使節団も一枚岩ではないのだよ、誰かが第三王子に告げ口でもしたんじゃろうて、まぁ大した問題ではないんだがな。流石に調印式でずっとあの顔でいられても困るからな。話題の矛先をリゼル坊にかえるために陛下が唐突にと言ったところじゃ。国内の賢者人気は凄いからの」
「まぁそういうことだ。簡単だが魔族討伐の特別小隊について説明するぞ。王国の近衛兵団、騎士団、魔術師団とは別の対魔族専用の小隊だ。一応、国王である俺の直轄の小隊扱いだな。その隊長がリゼルってことだ、20〜30人雇っていいぞ」
「陛下、それでは雑すぎます。10人編成の部隊を2〜3つほど、自由に編成して良い。部隊長もリゼル坊が任命して良いからな。
もし他の師団から引き抜く場合は団長と協議をするようにな。給金などの仔細はフォークにあとで伝えておくからのぉ」
「魔族討伐の件については成人前のリゼルを旗印にして申し訳ないと思っている。小隊を編成したら俺が任命式をする。リゼル領付近に宿泊・訓練施設も作る、他にも必要なことがあったら遠慮なく言ってくれ、王国としてはできるだけの支援は約束する」
「今夜の晩餐会から各家からの売り込みもきっとあるはずじゃ…言質を取られぬようにな。リゼル坊なら陛下よりは安心ができるがな」
キリッと陛下の方を釘刺す閣下、目を合わせないようにする陛下…王国が誇る賢王とドラキュラ閣下の実情である。
「失礼ながら会話に参加致します。リゼルは晩餐会は寄親役の私のそばにいなさい。子息の売り込み以外にも嫁候補の押し売りも来そうだしね、変な虫がついちゃうとミゼルに怒られるからね。それはそうと閣下、小隊の話が広がると教会からも押し売りが来そうですね」
「うむ、優秀な神官を派遣してくれるならまだ良いがのぉ…下手にリゼル坊を権力闘争のネタにされては困るのぉ。何とかしておくとする」
「ねぇ〜閣下。一つ質問しても良いかしら?小隊に入れるのは人族限定なのかしら?例えばエルフ族の優秀な若者でも問題はないかしら?今年の夏休みにエルフの森に行こうって話をしてたのよね」
「特に問題はないな。エルフ族の若者が魔族との戦いに協力してくれそうなのか?」
「う〜ん。わかんないけど、わたしみたいな変わり者も里の中にはいるからね。リゼルが良いって言ったら問題ないのね〜」
「エルフの小娘が何を言っておる!それならドワーフの里からも賢者と共に戦うといった戦士が多数おるわい!」
「酒を飲まないと動けないドワーフ族なんて必要ないんだからね!」
「ヒョロヒョロしたエルフ族こそ魔族との戦いには不必要だ!」
陛下と閣下の前でもいつものように口喧嘩をするディーとグローの二人…。
「喧嘩するほど仲が良い!」オーリがボソリとつぶやいた。
「仲良くない(わ)!!」
それを聞いて部屋の中が笑いに包まれた。
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