ダンク馬具工房
王都に戻り職人街へ移動をし、目についた馬具工房の中へ騎乗経験の多いオリビアが護衛がてら一緒に入っていく。
店のドアを開けると人の良さそうな白髪の店主さんが笑顔で対応してくれる。
「いらっしゃいませ。今日はどのようなご用でしょうか?」
「えーっと特注の鞍を作って欲しいのですができますか?」
「特注ですか?どんな装飾をすればよろしいですか?デザイン等はどうなされますか?」
「そっちの特注じゃないです。私のグリフィンの鞍を作って欲しいんです」
「グリフィン?所有されている馬の名前でしょうか?」
「あ、そうか…店主さん、店の外に出てもらって大丈夫ですか?驚かないでくださいね」
工房を出て、広い馬車を置いてある通りに出る。皆が外で待っていてくれている。
「グリフ出ておいで」 空間の中にいるグリフが召喚される。グリフは寂しかったのか早速、私に甘えてくる。
「な…なんですかこのモンスターは!?!?!?」
店主がグリフを見て腰を抜かし座り込む。
「私の仲間のグリフィンのグリフです。私がグリフィンに騎乗します、そのための鞍を作って欲しいんです。今、実際に乗ってみますね」
リードに手伝ってもらって、グリフに乗ってみせる。グリフはご満悦な表情をしている。店主が騎乗している私達を見回す。
「な…なるほど…確かにこの状態ですと不安定ですね…このモンスターは人を襲わないですか?大丈夫ですか?」
「大丈夫です。人は襲いませんよ」 私は笑顔で店主に伝える。
「馬用の鞍では多分合わないと思われます。馬と背骨の形が違いますから乗せている側、乗っている側双方に負担がかかると思います。背骨の形から鞍骨を作り直す必要があります。頭も馬と違いますから手綱をどうするかなど…1から作る必要が出てきます…」
「鞍とは簡単なものではないんですね。グリフ残念ながら作れないみたいだよ」
グリフが切ない声で泣く。頭を私にこすりつけてくる。
「失礼ですが貴方様のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
恐る恐る店主が尋ねてくる。どう見ても貴族の子息ではないと感じ取ったのであろう。
「あ、私はリゼル・クリムロード男爵です」
私の名前を聞いた店主はグリフを見て腰を抜かしていた態度を改め、直立不動で話し始める。
「噂の賢者様でしたか…これは大変失礼いたしました。わたしはこの工房の代表をしておりますダンクと申します。 賢者様の鞍を是非、我が工房で作らせて頂けないでしょうか? 賢者様の鞍を作ったとなると我が工房の歴史に箔が付きます!是非とも我が工房でお願い致します」
「私は作ってもらえれば嬉しいのですが大丈夫なのですか? 馬とは違うとなると作るの難しいのでは?」
「賢者様と賢者様の獣魔の体格や骨格などを測定させていただければ、必ずやご希望の鞍を私の工房で作ってみせます!!」
「それであればお願いします。グリフ良かったね、作ってもらえるみたいだよ。グリフの体を測るみたいだけど嫌がらないでね」
グリフは尻尾を立て喜んでいる。喜びのほうが勝っているのか触られるのは特に嫌がっていないようだ。
ダンクが店の奥に居る工房の職人さん達を呼び出しに行く。
グリフを見て職人たちは腰を抜かす。ダンクの説明を聞いて落ち着きを取り戻し、俄然やる気を出している。
3人の職人さんに私とグリフが細かく測定され始める。
そこから彼らの戦いが始まった…
途中の試作品が出来るたびに店を訪れる。
馬より早く動けることを伝え鐙と手綱をやり直す…
空を飛べることを伝え鞍の構造を作り直す…
実際に動いている姿を見るために職人たちを連れダンジョンへ行く…
グリフに乗せてもらった職人が感動で大泣きをする…
グリフの可愛さ・人懐っこさに職人が萌える…
私がグリフに騎乗しダンジョンの平原を駆け巡る姿を見たダンク工房の職人たちは感動で大泣きをした。
数々の試練を乗り越え一ヶ月間後、グリフの鞍と手綱が完成したのである。
彼らの情熱のお陰で私とグリフは騎乗が出来るようになった。
その後、ダンク馬具工房の名は王都で一躍有名になり予約が取れない店となるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます