鑑定の儀式

兄が貴族学校へ旅立ち、私は父との魔法の修行、母と剣の修業を日々繰り返していた。


父曰く、魔法の才能は非常に高いと。

母曰く、剣技の才能は非凡だと。


この世界の魔法は、詠唱を行い体内の魔力を用いて魔法を使う。

火・水・土・風の四大要素を中心とした魔法がメインになる。

その他には神官たちが使う神聖魔法などの魔法も別要素としてある。


1つ以上の魔術が使えると魔法使いとして認められる。

2つ以上で天才、3つ以上の魔法が使えれば国の至宝と言われる世界だ。

圧倒的に魔法使いが少ないと言える。


ラウル父様はクリムロード家を継ぐ前は、王宮の宮廷魔術師をしていた。

火と風の魔法が使える俗に言う天才魔法使い。

炎と風の魔法を混ぜ合わせた広範囲魔法は父様のオリジナル魔法。


”爆炎のラウル”と言われていたと酔った母様が口にしていた。その時の父様の渋い顔は忘れられない…。


そんな”爆炎の息子”こと私は魔法の修練を費やしていく。

父様曰く、火の魔法が一番覚えやすいらしく、風の魔法は難しい。

水や土の魔法は自分で使えないので教えられないそうだ。


3歳で初級の火魔法を使える私は非常に優秀だと褒められた。



時は過ぎ・・・鑑定の儀式の時期がやってきた。


教会へ向かう。同い年の子が集められ鑑定の儀式が行われる。これを国中で行っている。優秀な子は、王都の学校へ推薦されるシステムになっている。一般的には農民の子は農民など、親の遺伝子を受け継ぐことのほうが多いのだがトンビが鷹を産むケースもあるわけで優秀な子には国から支援され、卒業後には貴族に雇われたり、国に宮仕えすることもある。


不幸にも逆のケースもありえる…貴族の子供が…という場合もあるわけだ。ある意味、非常に怖いシステムでもある。幸いにも私は魔法が使えるので魔法使いの鑑定結果になるだろうと父は安堵していたが、どんな鑑定が出るかは楽しみである。


鑑定の儀式は平民から順番に行われていく。領主の息子である私は一番最後に鑑定される。

領民の間では、長男のラキル兄さんの鑑定結果は、魔法剣士であったことは知れ渡っている。それも踏まえ、幼い頃から私は神童と言われているためか、非常に注目されているわけだ。


教会の前は親子の喜怒哀楽の声が聞こえる。

教会の中へ護衛を連れながら、親子で歩いていく。


「3歳で現実を知る世界か…合理的ですが残酷な儀式ですね、父様」


「そうだな。平民であれば親の職業に付ければ安泰だが貴族の場合はそうもいかない。優秀な後継ぎでなければならない。これは王国の初代様からの思想なのだよ。長男が不遇の鑑定をされ、次男が優遇な鑑定をされる家もある。その場合が非常に大変なのだよ…幸いにして我が家は長男のラキルが魔法剣士だ、俺の跡を継ぐに相応しい鑑定結果だ。リゼルは気を楽にして鑑定を受けてきなさい。きっと、俺と同じ魔法使いだと思う」


「はい、わかりました父様。兄さんがいるので我がクリムロード家も安泰です。私も将来やりたいことがありますのでどんな鑑定結果でも受け入れたいと思います。鑑定の儀式へ行ってまいります。」


白髪の老司祭の前へと私は歩き出す。


「クリムロード伯爵家次男リゼル・クリムロード殿。こちらの祭祀の水晶に両手を差し出してくだされ」

厳かな空気の中、老司祭が神への祈りを捧げる。


「主神ローゼよ、彼者に鑑定の儀式を行い給え」

突然、水晶から眩い光が解き放たれる。とてもじゃないが目は開けてられない。

光が部屋から漏れる、突然の強い光に父が叫ぶ


「一体、何事だ!なんだこの光は!?」


「おぉ・・・こんなに水晶が光り輝くことは齢60を過ぎて初めてですぞ。ラウル・クリムロード卿……この鑑定結果を…。

心してこの水晶をご覧になってくだされ…」


水晶に浮かぶ鑑定結果は… ”賢者”


”私の物語が加速していく。”

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