赤子の私
生後3日目
家の作りは中世ヨーロッパ風、俗に言うロマネスク建築
私は異世界に転生した。
クリムロード伯爵家の次男として生まれ変わった。比較的、裕福な家のようだ
父の名はラウル・クリムロード、母 ミゼル、兄 ラキル、そして私の4人家族
「リゼル、わたしが父だよ。君の名前はリゼルだ、無事に生まれてきてくれてありがとう」
上機嫌な顔をしている父ラウルが私を抱きかかえる。
彫の深い彫刻的な顔立ち、映画俳優のような見るからに美男子
「リゼル、元気に産まれてきてくれ良かったわ。目元はあなたに似たかしら?」
横にいるのは母親であろう人物
友人に自慢の出来るレベルのわかりやすい美人
「父様、僕にも弟を見せて下さい。お兄ちゃんだよ、リゼル」
兄は、憎たらしいほどの美少年だ
この遺伝子ならば私も間違いなくイケメンになるであろうことが保障された。
家族が私の誕生を祝福してくれている。あぁ素晴らしきかな第二の人生
しかし、私は赤ん坊である
腹が減る…満たされる…睡魔に襲われる
このループが永遠のように続く。
この世界について色々と調べたいが、今の私は動くことも話すことも出来ない。
私が出来るのは元気に泣くことだけである。
今は耳からの情報だけが頼りだ、家族が話す会話を理解しよう。
勇者の誕生まで20年…長いのか、短いのか今の私には検討がつかない。
私が出来ることを考えなければ…だが今は眠い…
私の物語は、良く寝る子からスタートした。
1歳の誕生日
私は気が焦っていたようだ。
普通の乳児より早い成長をしていたとわかったのは後の祭りである。
通常の満1歳児は、たっちや数歩くらい。本は読めないがめくる程度、積み木で遊ぶくらい。
そんなことも知らない私は、通常の1歳児ではやらないようなことを連発した。
父や母と会話をする…普通に本を読む…歩き回る…
家中の執事やメイドからはクリムロード家から神童が産まれた!!と言われ、自重しても仕方がないので神童ということで成長して行こうと決意する。
最近知ったことでは、この世界にも現代日本のように七五三の節句に似たものが有る。
日本の七五三は”3歳で言葉を理解し、5歳で知恵がつき、7歳で乳歯が生え替わる”と言った意味合いだったと記憶していた。
こちらの世界では、”3歳で鑑定をし、5歳でお披露目、7歳で入学”と決まっている。
ラキル兄さんは6歳上のため、貴族学校への入学が控えている。
兄のラキルは3歳の鑑定の儀式で、魔法剣士の適正があると鑑定結果が出た。
我がクリスロード伯爵家は、父が魔法の適正、母が剣士の適正である。
ラキル兄さんはその両方の適正を受け継いだ形になった。魔法剣士は滅多に出ない鑑定結果で、王国内でも兄のラキルはとても有名人である。今年度の王都にある貴族学校へ入学する子たちは、すでにラキル世代と呼ばれているようだ。
幸いにも、私も魔法の適正があるようだ。
父と兄の修行を見学していた際に、魔法を見たときは異世界に来たんだと本当に感動したものだ。
真似をして魔法を撃ってみてたら暴発したのは最近の苦い思い出である。その後に父様に怒られ、庇ってくれた兄様には感謝しかない。
今日はそんな私の1歳の誕生日祝い。
父と母はワインを飲んで非常に上機嫌である。ラキル兄さんは、僕をせわしなく世話してくれている。
「リゼルとは、学校へ入ったらしばらく会えなくなるから今のうちに可愛がっておくんだ。」
前世の記憶があり、神の祝福がある私と違って、本当の神童はラキル兄さんなのだが、彼は弟想いの兄…ブラコンであった…
「ラキルは本当にリゼルが可愛くて仕方がないのね。兄弟の仲が良いことは本当に素晴らしいことよ。ラキルが最上級生になった13歳にリゼルが学校へ入学するのです。あなたはリゼルが自慢が出来る兄にならなければなりませんわよ。」
「はい、母上。リゼルはきっと3歳の鑑定の儀において素晴らしい適正を出すと思います。
兄として弟の手本になるよう学校で頑張ります。来月には王都へ行かなければならないのですから、今のうちにリゼルに忘れられないように可愛がっておきます。」
「ラキルよ、良い心がけだ。ラキルの代のクリムロード家も安泰だな!リゼルよ、こっちへ来なさい」
「はい、父様」
「これが誕生日プレゼントだ。本当なら3歳の鑑定の儀式の後と思ったが少し早いが、魔法の練習用に杖をプレゼントする。明日からラキルと一緒に練習に参加しなさい」
「ありがとうございます、父上。大切にします!!」
杖を貰い喜び勇む。明日からは念願の魔法デビューだ!!
”私の物語に魔法の1ページが追加される”
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