賢者の日
鑑定の結果。祭祀の水晶に出てきた単語は
”賢者”
「まさか、賢者とは・・・初代宰相様と同じ鑑定結果ではないか!? 司祭殿、これ以上のことはわからないのですか??」
「これ以上のこととなると、王宮の宮廷魔術師筆頭殿か、王都の教会にある祭祀を使わなければわかりませぬ。大司教様に手紙を早馬で出しますので王都へ向かわれてみてはいかがですかな? ラウル・クリムロード殿であれば宮廷魔術師筆頭殿へもお尋ねすることも可能だと思われますが。」
「おぉ、そうであった師匠に尋ねれば早い話だな。ありがとう司祭殿、そのことをすっかり忘れておった。大司教様に鑑定の儀式をお願いしたいとお伝え下さい。私も王宮へ早馬を出しますゆえに。今回の件は誠にありがとうございます。我が伯爵家から教会へ多大な寄進を致しますので。」
今までで一番の上機嫌な父上。
一体、何事が起きたのか問い合わせる。
「父上、賢者とは一体どんな鑑定結果なのですか? 父上のような魔法使いとは違うのですか?」
「リゼルよ、賢者とはな。この王国の初代国王の片腕であり初代宰相を務められていた御方の鑑定結果と同じなのだ。その初代宰相様以来、賢者の鑑定結果はこの国では出ておらぬ。我がクリムロード家から賢者の鑑定結果が出るとは思わなんだ。俺やラキルよりも凄い鑑定結果なんだぞ!」
「王宮の筆頭宮廷魔術師殿が父上のお師匠様なのですか?」
「あぁそうだ。これから屋敷へ戻って、師匠へ手紙を出さねばならぬ。7歳の入学式のときに合わせようと思っておったがすぐに王都へ向かうとする。王宮と師匠へ報告せねばならぬ。我がクリムロード家だけではなく王国にとっての一大事でもあるのだ。」
いつも冷静な父上の鼻息が非常に荒い。
ラキル兄様もレアな鑑定結果で、私は初代宰相様以来か・・・父上でなくても興奮はするか。
私は一人で納得をする。
「屋敷へ戻るぞ!」
教会のドアを勢いよく出る。
領民たちが結果がどうなっているのか待ちわびている。
優秀な跡取りが増えれば領土は安定をし、そこに住む領民の生活は潤う。過去の歴史がそれを物語っている。
素晴らしい鑑定結果を貰った長男、神童と言われている次男。その次男の結果だ、皆が期待しないわけがない。
「我が領民たちよ、息子リゼル・クリムロードの鑑定結果は、初代宰相様と同じ ”賢者”である!!!
今日は祝いごとだ!我が屋敷から酒樽を振る舞う。今日は皆で大いに騒いでくれたまえ、皆で祝杯だ!!」
うぉぉぉぉぉ!!教会の周りにいる領民たちは一斉に歓声を上げる。
ラウル様!リゼル様!!バンザイ!!教会を中心に万歳三唱が始まる。
きっと今夜は街中にこの結果の噂話が広まるだろう。
良い結果は将来の布石に繋がる、ここは父様ナイスです!
ごった返す教会を後にし、屋敷へ舞い戻る。
「リゼルよ、俺は手紙を送る準備などで忙しくなる。ミゼルへ今日の結果を伝えてこい。」
父様は颯爽と執事たちに酒樽の手配などをしに消えていった。
「母上、私の鑑定結果は ”賢者”でした。領民も皆喜んでくれました。」
「まぁリゼル、ラキルに次いで非常に優秀な鑑定結果で嬉しい限りですわ。
今日はご馳走にしましょう。あなたの好きな料理を用意させるわね。わたしの実家にもこのことを伝えなきゃだめね。リゼル、あなたのお祖父様もきっと大喜びよ♪」
今日の3歳の鑑定の儀式は、賢者の儀式と言われ記念日になる。父様の独断でクリムロード伯爵領はこの日を祝日に認定した。
私の物語に、賢者になる日が追加される。
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