将来の従士クリス
鑑定の儀式から一週間がたった。
あれから屋敷の中は慌ただしい日々だった。
王宮へ鑑定結果を報告すること。すなわち登城である、そのため私の服を拵えるために着せかえ人形になる日々。
この世界で、新しい貴族服を作成することは全てが手作業のため日数が掛かる。
しかしながら、領都中の針子たちが協力して仕上げたようだ。
そんな中、屋敷へは祝いの言葉を述べに隣領のスタンロード子爵家が訪れてきた。
クリフ・スタンロード子爵は、父様と貴族学院の同級生で隣の領土ということで昔から良いライバル関係の親友と言ったところだ。
今回はクリフ・スタンロード子爵の3男坊も同じ3歳ということで一緒に連れてきたらしい。
「リゼル・クリムロード君、君のお父さんの親友のクリフ・スタンロードだ。この度は、君の鑑定の儀式の結果を祝いにやってきた。隣領の私の耳にまですぐに入ってきたよ。なにせ賢者の称号は100年以上も前の記録にしかないからね。これから君は大変なことになるよ、がはははは」
インテリな見た目の父様とは違い、見た目もワイルド系で豪快なクリフ卿である。
学生時代から馬が合い、2人で相当やんちゃをしていたみたいだ。
「クリス、こっちへ来なさい。私の息子のクリス・スタンロードだ。鑑定の儀式の結果、”槍師”の能力を授かった。我が領土はクリスロード領の3分の1程度の大きさだ。長男と次男も良い鑑定結果を貰っている。神童の君と違ってクリスは幼少期からおとなしい性格でね、まぁ年齢相応だ。クリスの将来のことを考えて、君の従士にして欲しいのだよ。」
「はじめまして、ぼくはクリス。なかよくしてね」
クリフ・スタンロード子爵の後ろからひょっこり顔を出しながら挨拶をしてくる。
第一印象は、ワイルドとは正反対、面長の顔の輪郭と人懐こい笑顔、奥様似なんだろう。
「良いのですか?クリフ卿。クリス君の将来を簡単に決めてしまって?」
「いいんだ、リゼル君は将来、必ず大物になる。そのときに我が息子が役に立ってくれるなら父親として大満足だ。貴族の世界、妬み僻みも学内でもあるからな。入学するまでに腕の方も磨いておくから、壁役にでも使ってくれ」
「聡いリゼルならわかると思うが、子供のうちからも派閥というものは存在する。信頼できる仲間は一人でも多くいてほしいのだよ。クリフの息子なら、俺も安心できる。今は子供同士で仲良くしていなさい。大人になったときに良き忠臣は多いに越したことはない。」
「わかりました、父様とクリフ卿がそういうのであれば。では子供同士で奥の部屋で遊んでまいります。
今日はごゆっくり親睦を深めて下さい。明日は王都へ出発ですのでワインの飲み過ぎには二人共、ご注意下さいね」
「おいおい、本当に3歳児か?うちの奥さんみたいなことを言うぞ!?」
「ははは、言われたとおり飲みすぎに注意しなければね。良いワインが手に入ったので今日はそれを開けよう。未来の子どもたちに乾杯だ」
”私の物語に、将来の従士が一人加わった。”
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