公爵領①

王都への旅立ち

王都までは途中の公爵領を挟んで3日の予定

今回の王宮への訪問は、ラキル兄さんにも会えることもあり、家族3人揃って向かうことになった。


我が家からは箱馬車と軽馬車の二台編成

兵士長マクベスを筆頭に護衛の兵士が5名.

執事長のセバスチャン、メイド長のアリス、厩舎頭のロン、従者のイワンで合計12名。


他に道中の護衛役兼、道案内役に冒険者を雇っている

クリムロード領内で唯一のBクラス冒険者パーティー”風の護り手”の3人組だ。

リーダーが風魔法の使い手なのがパーティーの由来となっているようだ。

王国の中では冒険者の中に魔法使いがいるのは相当に珍しい。


天候は晴れ

絶好の旅日和である。


私は初めての異世界での旅行ということで少し浮かれていたようだ・・・

馬車の振動で・・・お尻が・・・

異世界”あるある”を生で体験することとなった。いつか、改善したい…


初日はテントを張り野宿

兵士たちが手慣れた作業でテントを組み立てて行く。

前世ではインドア派だったので、私はキャンプをしたことがない。

人生初のキャンプデビューが異世界とは皮肉なものだ。


「母様、父様と母様はテントでの生活はしたことがあるのですか?はじめてなので興奮しております。」


「あら、子供らしい一面ね。王都へ行く際には町や村がない場所もあるのよ。ラビウス王国はとても広い王国なの。クリムロード領はまだ王都に近い方だから、1回の野宿で済むけど私の実家のある場所からだと王都までは1週間ほどかかるわ。だから野宿は子供の頃から何度もしているのよ。

あなたのお父様に至っては、宮廷魔術師時代に訓練で遠征に行くから他の貴族よりも野宿経験は断然豊富ね。」


「なるほど、有事の際にはこのような野宿を何度もするのですね。これは慣れなければいけません。邪魔にならないように、皆のお手伝いをしに行ってきます。」


「そうね、邪魔をしないように見に行ってご覧なさい」


初日の夕食は、屋敷から持ってきた食材を手早く調理。

夕暮れ時、温かいスープとパンが空腹の胃袋に染み渡る。

これが長旅ならば携行食に変わるんだよと、苦笑いをしながら風の護り手のメンバーが教えてくれた。

あの表情を見ると、よほど不味いのだろうと・・・


交代で護衛をしている横を通り、テントの中で1日目の夜は過ぎていく。


2日目、太陽が昇っている最中から移動のための後片付け、移動日の朝は早い。

道中は何事もなく、太陽が真上で輝く頃に公爵領の街へたどり着く。


高い城塞。

「うわぁ凄い!とても高い城塞ですね、父様」


「リゼル、ここが王都への最終防衛ラインの第二首都のアラビスだ。今日はアラビス城で一泊していくぞ。宰相様からご招待されているんだ。普段は宿泊することがないから貴重な機会だ。良い機会だから公爵家を見て学んでおきなさい。」


番所の前には長蛇の列をなしている。

流石は第二首都だ。たくさんの旅人や商人、馬車が並んでいる。


貴族専用の門の方へと向かう。

セバスチャンが当家の証の短剣と心付けを番兵に手渡し、確認を依頼する

20分ほど待ったが、無事に確認され通行を許可された。


門をくぐると私の視界にはクリムロード領の街より遥かに大きい第二首都アラビスがあらわれた。

メイン通りを馬車で通る。アラビス城への途上の中、馬車から様々な人々が見て取れる。

異世界の別の街に来たんだなと実感させられる。


「母様、あの耳の長い美しい女性はどこの地域の方なのですか?」


「あれは、エルフ族よ。私達の領内にはいないから初めて見るのよね。森に住んでいる一族なのよ、珍しいわ」


”私の物語に、初めてのエルフが目撃された。”

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