8歳 ロード辺境伯⑨
醜悪な皺だらけの老人の顔に血走った目が浮かび上がってくる。その後に徐々に獅子の胴体、蠍の尾びれが見えてくる。
「合成獣を倒すとは中々やりおる。家畜共がここに来るということは小鬼どもの襲撃は失敗でもしたか?」
枯れた声で私に疑問を投げかけてくる
「モンスターのスタンピードはおまえがやったのか?」
「まぁそうじゃな…目が覚めて腹が減っておるから餌を連れてくるように魔法をかけてやったがの。家畜のお前らがここに来るということは失敗でもしたか」
「街への襲撃はちゃんと阻止はした。原因がおまえなら倒さなきゃならない!」
「坊主、こやつは過去に封印した魔族じゃ!!」
フェンが叫びながら臨戦態勢をとる。
睨み合う私と魔族。老人の顔がニヤリと笑う。
「封印からやっと解放されたと言うのに…やれやれ面倒なことだ…今の我では力が足りんのぉ…一旦引くか…”闇よ”」
ぼそっと魔族が発し、部屋の中が一瞬暗くなり視界から光が失われる。
闇が消え視力が回復したときには魔族は私達の前から消えていた…
「”フェン” 魔族はどこへ!?」
「あの魔族はこの部屋から逃走したぞ。また封印されるとでも考えたんだろう」
「初代様たちが封印した魔族が蘇ったってことなの?」
「我にはわからぬ。そこに存在しうるということはそうなのではないか?」
「そうか…」
魔族の封印が解けた…勇者が現れるまでまだ10年以上あるんだぞ…私は頭を抱えて悩む。
まずは皆に魔族と封印についての説明を始める。
「リゼル様…魔族の封印が解けたのですね…」話を聞いていたリードが沈鬱な面持ちで私に話しかけてくる。
「うん。今はこのことを陛下や閣下、辺境伯様に相談をしないと…残念ながら今の私には出来ることは少ない…」
「そんなことないわよ!スタンピードだって止めたんだし、魔族を追い払ったんだしリゼルがいなかったらもっと酷いことになってたんだからね!まずはここに宝箱があるか探しましょう〜もしかしたら初代賢者の知恵が隠されてるかもしれないでしょ?」
凹んでいる私をディーが元気づけてくれる。
部屋を探していると先程の魔族に似た石碑が半壊した状態であった。
「きっとこれが封印だったんだね。あの地図は封印した魔族の場所を示していたんだね」
「なんかこれに触るとリゼルは別空間に飛ばされそうだね〜」
ディーに茶化されながら、石碑に触るが特に何も変化はない。石碑には日本語で”マンティコア”と刻まれている。
部屋の中は転移装置しかない。ここで悩んでも仕方がないので地上へと皆で戻ることにした。
急ぎロード城に戻りフロイ卿にダンジョンでの経緯を話す。
「スタンピードの元凶が魔族だってことか•••どこに逃げたかもわからないのが厄介だな。その魔族はまた人間を襲う可能性はあるんだろう?」
「人間のことを家畜と言ってましたので可能性は高いと思います」
「ふむ、対処がしにくいな•••いっそのこと隣国にでも行ってくれないもんかな•••リゼルの意見を聞かせてくれ」
「魔族は力が足りないと言っていました。老獪な知恵を持つ魔族だと考えれば、今、行動すれば流石に目立つと考え、しばらくの間はどこかに潜んで回復を待つ可能性が高いと思います。問題はどこに潜伏しているか•••ダンジョンの中に隠れているのか、見つかりにくい山中に潜んでいるのかは検討もつきません」
「せめて封印方法がわかればな•••人間側は後手に回るしかないか。トーマス、ドラキュラ爺に早馬を出して経緯を伝えろ。不夜城で対策を考えさせるしかないな。今は警戒することしかできん。リゼル、爺が言うまで他言無用だ。下手に公にすれば王国中がパニックになるわ」
「かしこまりました。その方が良いと私も思います」
「とりあえずだ、リゼル達が戻ってきたことだ。トーマス、明後日は領都で祝賀会をやるぞ!準備と告知をしといてくれ。金はかかるがケチっても仕方ね〜。パーっとやれパッーとな。リゼルよ、帰ってきて早々悪いんだが、明日にでも街と城に温泉掘ってくれ。悪いことの後には良いことも用意してやんねーとな、おまえにやる褒美は別に用意しとくから頼むわ」
明日からは目的の一つでも有る温泉発掘作業だ!温泉の布教に頑張らねば!
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