8歳 ロード辺境伯⑧
モンスターの来襲から夜が明けた翌日。
モンスターの死体の処理に騎士団と冒険者たちが忙しそうに作業をしている。
現在の私達はフロイ卿からのスタンピードの調査依頼を受け、辺境伯領地内にあるダンジョン内部を進んでいる。
早朝にギルドから得た情報を元に階層を下っていく。とにかく中のモンスターの数が多い。
「リゼル、未踏破は10階からよね?」
「10階のボス部屋は未だにクリアされていないみたいだよ。辺境伯の依頼を受けた地元の有名なパーティーが挑んだみたいだけど、戻ってきてないみたい。出てくるモンスターのレベルも高いから一筋縄じゃ行かない相手だと思う」
「そうね。モンスターの出てくる数が異常ね…フロアーが広くないのがまだ救いよね。これで広かったら体力が持たないわ」
「この場所なら安全だし10階に下る前に少し休憩をしよう」
9階のセーフゾーンで皆で休憩をする。ここに到着するまでずっと戦闘をしてきせいか肉体、精神ともに疲労が凄い…出てくるモンスターのレベルが高く、とにかく数が多いためだ。
「中はどんなモンスターか予測不明だから、みんな気を引き締めて行こう!」
広いボス部屋の中には…奥に見たこともないモンスターが鎮座している。
上半身が獅子、肩口の途中から山羊の体、尾が蛇…自動車サイズの巨躯だ…グリフの何回りも大きい
「リゼル様、このモンスターは一体なんですか!?」
家臣団の中で一番博識なリードが初見だというモンスターが扉の奥に現れる。
「こいつはキマイラか!?どう見ても怪獣じゃないか」
元の時代のゲームの記憶を探り出す。翼が生えていないことは幸運だった。
「このモンスターは獅子の顔から炎を吐き出す可能性がある。壁の準備を急いで!」
自動車並みの大きさのモンスターだ。突進力・破壊力は今まであったモンスターの中で一番あるだろう、きっと俊敏性もあるはずだ。
単純に突撃されるだけでも全滅しかねない。
キマイラが攻撃体勢に入る前にこちらの防御態勢を整える。
「モンスターは突進をしてくる可能性が高いから壁で進路を妨害!飛び越えてくる可能性も考慮して壁に角度を付けて。口から火を吐く可能性があるからそれに対する備えを!尾の蛇は上から攻撃してくるはずだ」
そう言って私は全員に指示を出す。
「ディード、”ノーム”と”ウンディーネ”に魔法の強化をさせて」
「ロンザ、魔力を込めた強固な土の壁で皆を囲うように」
「リード、土の壁の前に水の膜を厚く張って炎をに耐性を」
「オリビア、モンスターの動きに備えて皆を守って」
「クリス、モンスターの動きを皆に教えて」
次に精霊たちに指示を出す。
「”ノーム” 土の壁を頑丈に」
「”サラマンダー” 敵がこちらに来たら攻撃を」
「”ウンディーネ” 火を噴いてきたら皆を守って」
「”シルフ” 私とグリフを浮かせるのを手伝って」
「”フェン” 空中にいる私とグリフの前に氷の壁を作り攻撃を防いで欲しい」
キマラがこちらに気づき、尾の蛇が威嚇をし始め、獅子の咆哮と共に攻撃態勢になる。
山羊の頭が泣き叫び、獅子の口から火の球が放たれる。
リードの水の障壁が一直線に向かう火の球を防ぐ。火炎攻撃を無効化されたキマラはこちらを威嚇しながら向かってくる。
私はグリフに騎乗をし空中に浮かび上がろうとする。それを見たキマラは阻止しようとグリフ目掛けて突進を開始する。
3人の魔法使いは突進を阻止しようと、それぞれ魔法を放つ。
「”サラマンダー” 火の槍!」 「ウォーター・カッター!」 「ストーン・ハンマー!」
サイドステップで3人の魔法を避けながら突進を続ける。
「”シルフ” 竜巻!」 「ウォーターバレッド」 「ニードル!」
3人が動きを阻害する魔法を放ち、キマイラの加速を減少させる。
私とグリフが”シルフ”の風の力を借りながら上空に緩やかに浮かび始める。
それを見たキマラは獅子の口から火を放つがフェンの氷の壁に阻害される。
尾の蛇が上空の私達を威嚇する。地上に居るキマラが上空の私達に出来る攻撃方法は少ない。
「皆、モンスターがグリフに注視している今がチャンスだ!」
皆が一斉に魔法を放つ。オリビアは加速をしながら尾の蛇に斬りかかる。
「”フェン” 私の魔法に力を加えて! ”シルフ” 私の魔法に風の加速を ”デリンジャー”」
巨体のキマラ相手に威力と速度が強化された氷の弾丸が獅子の顔を襲う。
3人の合体魔法が山羊の顔を破壊し、オリビアのミスリルの剣の一撃が蛇の首を切り落とす。
獅子の顔だけになったキマラは呻きながらその場でのたうち回る。
止めと言わんばかりに全員で魔法を一斉に放ちキマイラは絶命した。
奥から老人の声が聞こえる…
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