9歳 閣下の謀略
辺境伯領と隣国の間にある中立地帯…とある会談が行われていた。
「では、この内容でよろしいですかな?」
ニコリと怪しい笑顔のドラキュラ閣下が隣国の交渉人に内容を提示する。
「クザン宰相、この内容が停戦の落とし所でしょうな…暴発した軍部に理解させるのに苦労しますが…国民の声を無視はできんでしょうな」
苦笑いをしながらもある程度の内容を勝ち取れたようだ。
☆★☆★
隣国との争いが始まる前からドラキュラ閣下の策略が実行されていた。
ラビウス王国は農業自給率が高いため、食料を他国へ輸出している。もちろん隣国にも輸出はしている。
紛争中の隣国とは言え食料輸出を一気に減らすと紛争理由が領土紛争から食料問題に変わり、戦争へと変わる可能性があるため、紛争を理由に隣国への輸出量を少しずつ減らし単価を上げていった。
自給率が低い隣国は王国からの食料輸入が少しずつ減っていく…隣国の食糧事情は日に日に悪化して行き、徐々に物価が上がっていく。
まったく輸入食料が入らないわけでもなく、戦争のための重税で苦しむ隣国民のヘイトは戦争賛成派の貴族と軍部へ日に日に溜まっていく…
この機会に戦争反対派と穏健派が国王を説得し和平交渉へと進むこととなる。
☆★☆★
実質勝利はラビウス王国のため、隣国カズール王国との休戦協定、平和条約はラビウス王国側で行うこととなる。王都近隣の貴族は条約締結日に王城へ参列するように伝えられる。
事前に私宛に閣下から呼び出しがあった。
「リゼル坊、よく来てくれたな。今回はカズール王国との件で頼みがある。お飾りだがカザール王国の第三王子が今回の使節団のリーダーとなっておる。条約締結後に第三王子は我が国の貴族学校へ編入する。まぁ卒業するまでは実質人質扱いじゃな」
「それで私への頼みとは何でしょうか?」
「うむ、その第三王子はリゼル坊と同い年なのだよ。話によるとだいぶ我儘に育てられたらしくのぉ…これで意味はわかるな?」
「えぇ…面倒事対策ですね」
「うむ、隣国とは言え継承権がある王子じゃ。下手な貴族の子息では太刀打ちできまいて。リゼル坊には面倒をかけるが頼む。次に条約締結が終わったあとにリゼル家へ家紋の賜与を行う。その際にはオリバー殿、ディー殿、ドワーフ族の2人も一緒に参列するよう伝えておいてくれ、エルフ族とドワーフ族、大魔術師がいればリゼル坊の権威付けにも役立つじゃろう。隣国へのアピールにもなるしの、流石の我儘王子もリゼル坊の立場を理解できるじゃろうて」
ニコリと笑いながら閣下の背後に黒いオーラが見えたのは気の所為だ…きっと…。
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