7歳 貴族学校入学前③


ディーが見たいと主張したことで、クリムロード領内に戻る前に領地を見学していくことに決まった。


村は王都から馬車で2時間ほどで到着するので日帰りで移動できることもあって全員で移動する。馬車の中でフォークさんから村の現状の説明を受ける。


混合農業の初年度の結果、家畜の育成、住民の増加率…よくここまでスラスラと話せるもんだと感心してしまう。道中は何事もなく村へと到着する。


「村ですか、ここ?」


立派な柵で覆われた村の入口を見て驚いてしまう。門兵が村の門の前で並んでいる人の流れを処理しているが一向に収まる気配がない。


「村への移住希望者が大半ですね。今この村は跡を継げないものたちの希望の村となっております。リゼル・ドリームと国民からは言われております。王国の厳しい審査がありますのでここに並んでいるものは審査をクリアした者共ですが村に入る前にも審査がございます。そのため門の前は毎日この状態です。門番に事情を話してまいりますので馬車の中で少々お待ち下さい」


フォークは、馬車から降り門番のところへ事情を話に行った。番兵達が一斉に敬礼をし、馬車を出迎えてくれる。


貴族用の門をくぐり、村の中へと馬車は移動する。村の道路は拡張され整備された路面は馬車でも揺れずに移動できる。村の中はきちんと区画され商業地区は路面店で賑わっている。貴族の馬車が通るためか、道行く通行人がこちらを見始める。


「あの馬車ってもしかして??」 「賢者様が村に来たんじゃないのか?」 「王国の役人だろ?」


馬車は町の中央にある代官屋敷へと向かう。人々が馬車の後を追うようについてくる。


代官屋敷へ到着すると、屋敷の前で役人たちが全員並んで出迎えてくれている。


「リゼル卿、ようこそ御料地へ」


一斉に礼を取りながら挨拶をされる。それを聞いていた村人たちが騒然とする。私たちは順に馬車から降り始める。


ディーが降りたところで異変が起こる。


「なんて美しい…」「あれは伝説のエルフじゃないのか!?」「村に天使が舞い降りた…」


フードをしてないことに気づくが後の祭りである…若い男たちが拝み始める…仲間たちはいつも一緒にいるので慣れてしまっているがディーは美しいエルフ族である。エルフを見たことがない村人たちの反応のことを忘れていた…こうなってはどうしようもないので最後に私は馬車から降りる。


「あーあの美少年がリゼル様…」「村に賢者様が…」「俺達の領主様が来られたぞー!」「リゼル様万歳!」


お祭り騒ぎである…こうなってはどうしようもない…


「”シルフ” 私の声を皆に聞こえるように拡散して」 シルフはコクリと頷く


「皆のもの、静まり給え。」


騒然としていた村人たちは一斉に静まり返る。家臣団や従者たちが臣下の礼をする。


「私がこの村を治めているリゼル男爵である。今まで領地に顔を見せず申し訳ない、今年から貴族学校に入学するために王都へと移動をしてくる。これからは村へは頻繁に来ることになる、どうか私の顔を覚えていて欲しい。 わずかな期間でこの村が驚異的な発展をしたことに私は感動をしている。皆のものが努力をしてくれた成果で大変に誇らしい。私は王国で一番栄える領地にすることを約束する。皆が飢えに苦しむこともなく、笑って日々の生活がおくれるよう私も最大限の努力をする。どうか私に力を貸して欲しい、これからも村の発展のために力を尽くして欲しい。」


「リゼル様万歳!」「リゼル村万歳!」「賢者様万歳!」どこかしらから万歳三唱が怒り出す。拝み始める人、泣き出す人もいる、現段階では村の人達には嫌われていないようで一安心だ。人々を後目に代官屋敷へ入っていく。


「リゼル、かっこよかったわよ〜。お父様みたいな演説ね、血は争えないわね」


ディーが茶化してくる。クリスにいたっては尊敬の眼差しでこちらを見てくる。褒められると悪い気はしない。


国から派遣されている代官や役人たちから、村の今後の展望や意見などを聞いていく。目下の課題は、移住希望者が多すぎるため農地の開発が遅れている点と娯楽施設が足りないといったところ。


娯楽施設がないと犯罪や違法賭博につながる、これを解決するにはあれしかない。


私は目下の課題に大して解決案を示していく。


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