リゼル法

〜 クザン・アラビスside 〜


「閣下、公示以降、尋常じゃない量の問い合わせが来ております。役所での処理の限界を超えております。このままでは市政に影響が出ます、対処の指示をお願い致します」

部下の慌てた声が政務室に響く。


「やれやれ、予想はしていたが予想以上の反響じゃな。賢者の名前は伊達ではないな、100年以上経っても初代様の威光は未だ健在というわけだ。儂としては嬉しい限りだが役人たちにはたまったもんではないか…わかった、至急対応策を申し付ける。新たな公示を来週末に発表にする、それまでは問い合わせは禁止と役所に張り紙をださせよ」


クリムロード領の視察へ行った者たちは、わけもわからぬことしか言わぬし頭が痛くなる。出向したいだの温泉教万歳だと本当にわけがわからん、リゼルは一体何をやらかしておるんのだ…。


「このままでは貴族や商人どもが先を争って利権争いをするな。金にがめつい奴らじゃ神童とはいえ5歳児だ、甘くみてるのであろう。リデルが出した策でも使うとするか。 いや、ここは若手の試練する方が楽しいかもしれん、あいつらの最終試験にでもするとするか」 ドラキュラ閣下の悪い笑顔である。


〜 フォーク・ラビルside 〜


俺たち同期組のところに閣下からの指令状が届いた。件の賢者様への対応についてだ。


「何々、リゼル村で新たな施策が行われる、その際に村は注目の的になる。商人たちなどからリゼル卿と村を守る案を考えよ。期間は明日の夕刻まで…」

閣下〜…漠然としすぎですよ、これじゃ〜期限がなさすぎる。調べ物もまともにできない…とにかく想定出来ることを羅列して消去法で対処策を考えよう…やれることをやろう頑張れ俺…


深夜遅く…


「ここまでで可能性あるのが、”温泉を発掘して観光地化” ”利益率・収穫量の高い特産品の生産・製作” ”賢者への先行投資目的” この3つか。いかにも商人が欲しそうな利権が揃ってるな…確かにこれは守る案を考えろに該当する。小中規模の商人限定にするとしても、裏から手を回されたらどうしようもないな。国で商いを運営すると反発の方が大きい。これは手詰まりではないのだろうか•••」


明け方…


「王国で法律を作る!?大義名分もなんとかなりそうだ、これならリゼル村に平和が…」


徹夜明けの翌日の夕刻、閣下の政務室にて発表が行われる。

他の同期は微妙なアイデアしか出てこなかった、私は法律の制定をアイデアとして発表した。


「うむ、フォークよ正解じゃぞ。リゼルと同じようなアイデアだ。」


「同じアイデアですか!?」

俺は愕然とした。神童とは言え5歳児だぞ!?

しかし、詳しくリゼル卿の意見を聞いてみて驚きの声が出た…本当に5歳児なのか!?


「閣下、今の王国は良い状態にあります。しかし、このままだと重大な問題が将来起きてしまう可能性が高いです。貨幣経済が進んでいくと商人ギルドが力を持ちすぎます。そうすると技術革新がどこかで産まれます、最初は国が富み、国民も景気が良くなり喜ぶことでしょう。その後には力をつけた資本家が搾取する時代に変わります。搾取された人たち、その不満はどこにぶつけられますか? 最終的には王国にその不満がやってきます。 そうなると王国に血の革命がきっと起きるでしょう…その前に現状の問題をある程度、解決できるよう公正な商売が出来る法律を制定する必要があります。 談合・独占の禁止、権利の保護、公正な行動の義務化などを名文化し、不正を犯したものを厳罰化することである程度は対処が可能になります。」


「リゼル卿は儂にこう言ったのじゃ、まるで未来でも見ているかのようにのぉ〜、実際にリゼル村がスタートすれば公平な商売などできんだろうしな。来週末にリゼル村について新たな公示をする。その際にこの法律の原文を公示することに決めた、フォークよ王城の官僚を好きに使って良い、5日間で法案の原文を考えよ!」


「はい…」

(5日間って…俺死ぬのかな…未来の嫁さんごめんなさい…)


”もう少し先の未来、この法案はリゼル法と言われることになる”

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